« マーラーおたくのための歴史的録音 | トップページ | ブログ移転します。 »

ノリノリノリントン!

<1>

4月のN響定期Cプロ初日(22日、NHKホール)。指揮はロジャー・ノリントンということで、「対向配置、ノン・ヴィブラート」仕様のN響である。オール・マーラー・プロ。

花の章(ブルーミネ)
さすらう若者の歌(バリトン:河野克典)
交響曲第1番ニ長調「巨人」

つまり、第1番の成立にまつわる曲を集めたプログラム。もちろん、「さすらう若者の歌」のメロディーが第1番に転用されている(あるいは、ひとつのメロディーがふたつの曲で共有されている)ということを私はすでに知っている。しかし、この2曲をコンサートで続けて聴くことで、そのような前知識以上のことを体感することができる。例えば、歌曲集の第2曲にある「今朝、野山を歩いていると(Ging heut' morgen übers Feld)」の旋律が第1番の第1楽章に現れるとき、歌詞はなくても、そこには草露に濡れた野原の情景がありありと浮かんでくる。そして第4曲にある「道端に菩提樹が立っている(Auf der Strasse steht ein Lindenbaum)」の旋律が第3楽章に出てくれば、苦悩に打ちひしがれた者がたどりついたはかないやすらぎのイメージ(それは死のイメージとつながる)がすぐに想起されるという具合に。さらに、歌曲集そのものが「愛している人が自分以外の男と結婚する」という物語を持っていることを考えれば、第3楽章で葬送行進曲を中断して流れ出す賑やかな音楽は、ユダヤの婚礼音楽(すなわちクレズマー)以外のなにものでもないことに思い至る。第1番をより深く味わうためのプログラムといえる。

正面最後列に8本のコントラバスを並べた対向配置(ただしティンパニは2台とも舞台上手、下手は打楽器類)、ヴィブラートをかけすぎない「ピュア・トーン」の使用はやはりノリントン。しかし、そんなピリオド・アプローチ的な要素とは無関係に、これは素晴らしい演奏だった。全体的に音量を抑えながらも、ここぞとばかりに大爆発して急速なアッチェレランドをかけたり、第3楽章の中間部を実に夢幻的な音色で響かせてみたり(クレズマーも雰囲気が出ていて最高)。第4楽章のエンディングの速さも特徴的で、これを「あっさり薄口」と感じる人もいるのだろうけれど、名だたるマーラー指揮者たちによる過度にロマン的な解釈をはぎとった、新鮮な「巨人」像だと感じた。音楽をオケにまかせるように棒をふるノリントンも、この曲の指揮姿としてはあまりない感じで面白い。そして第4楽章の見得を切るようなゲネラル・パウゼ、好き。

<2>

神奈川フィルハーモニー第271回定期演奏会(4月23日、横浜みなとみらいホール)。指揮は金聖響で、マーラーの交響曲第7番。冒頭に金による震災へのコメントと、被災地に捧げるバッハのアリアがあった。

第7番の実演を聴くのが実にひさしぶり。なぜかここ4~5年、この曲がどこかのオケにかかるときいて聴きに行こうかなと思うたび(なんせ実演の少ない曲なので)、転勤になってしまったり、仕事の予定とかぶってしまったりで、いつもチャンスを逃していたのだ。金の指揮は実にエネルギッシュ。自分がまだスコアを勉強しきれていないせいもあるのだけれど、前半はこの曲ならではのごちゃごちゃ感が強く出てしまって、なかなかひとつの音楽として聴こえてこないもどかしさがあった。しかし第3楽章以降は見事にまとまって、第5楽章はかなりの熱演。第4楽章のマンドリン・ソロも印象的だった。

2年越しマーラー・イヤーの巡礼は続く・・・。

|

« マーラーおたくのための歴史的録音 | トップページ | ブログ移転します。 »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/78230/39755683

この記事へのトラックバック一覧です: ノリノリノリントン!:

« マーラーおたくのための歴史的録音 | トップページ | ブログ移転します。 »