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Covered Beatles (14) Abbey Road 編

久しぶりの Covered Beatles です。いろいろとコメントも頂いていたのに、あともう3枚というところで長々とお休みしてしまって申し訳ありませんでした。まあ、別に仕事で書いているわけでもないので許して下さい。初めての方のためにひとことだけ説明しておくと、ビートルズの全公式録音曲(ビートルズによるカヴァー曲は除く)を全部違う人のカヴァーで探してみようという酔狂な試みです。今回は実質的ラスト・アルバムの「Abbey Road」。

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1) Come Together / Ike & Tina Turner (from"Come Together"1969)
アルバムのトップを飾るこの曲からして、有名アーティストによる名カヴァーが目白押しなのだから、選曲者としては頭が痛いところです。原曲そのまんまのエアロスミス、渋いブラザーズ・ジョンソン、ファンク路線のサラ・ヴォーン、いずれも一聴の価値はありますが、ここではアイク&ティナ・ターナーのパワフルなカヴァーで。基本的には原曲のニュアンスをなぞりながらも、ティナの絞り出すようなソウルフルなヴォーカルがオリジナルにはない魅力となっています。このロックともソウルともつかないサウンドがアイク&ティナならではの味で、数多いこの曲のカヴァーの中ではキラリと光るものを感じます。次のアルバム「Workin' Together」(1970)に収められた「Get Back」のカヴァーも同じ路線で、いい出来です。

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2) Something / Carmen McRae (from"Just A Little Lovin'"1970)
この名曲もカヴァーに恵まれているだけに、誰のヴァージョンにするかはかなり悩ましい問題です。アイザック・ヘイズの11分超のカヴァーは確かに凄いけれど、アルバムの2曲目で聴きたくないというのが正直なところ。「Something」大好きと公言していたフランク・シナトラの録音は、あまりに完璧すぎて面白みに欠けると思うのは私だけでしょうか。そこで、大物ジャズ・シンガー、カーメン・マクラエの1970年のアルバムから選んでみました。ジャズというよりはポップでムーディーなアレンジで、歌いまわしにはこの人ならではのゴスペル感覚が溢れています。このアルバムには他にも「Carry That Weight」「Here, There And Everywhere」のカヴァーも入っており、裏名盤的な評価を得ています。そういえばカーメンには「Got To Get You Into My Life」のカヴァーもありました(「For Once In My Life」収録)。

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3) Maxwell's Silver Hammer / Anita Harris (from"Anita In Jumbleland"1968)
ポールお得意のノヴェルティ・ソングの決定版的作品。この不気味で楽しい曲は、普通にカヴァーしたのではなかなかその面白みが伝わりません。そこでイギリスの女性タレント、アニタ・ハリスが出演したテレビ番組のサントラより選曲。子供向けのミュージカル番組らしいのですが、効果音を含めてノヴェルティ感覚たっぷり、楽しさ満点のカヴァーです。

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4) Oh! Darling / Huey Lewis (from "Come Together: America Salutes The Beatles"1995)
これもまた超有名曲ですが、この「アメリカのカントリー・シンガーたちによるビートルズ・カヴァー集」の中に入っているヒューイ・ルイス(日本のポップス・ファンにとってはロック・シンガーの印象が強いですが、確かにカントリー的な傾向の強いシンガーです)のカヴァーを推します。何の小細工もないストレートな歌唱で、大陸的なノリがオールド・スタイルのロッカ・バラードというこの曲の本質を見事に描き出しています。なんとも土臭い感じが最高。そしてヒューイのシャウトはやっぱりぐっときます。

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5) Octpus's Garden / Samuel E. Wright (from original soundtrack "The Little Mermaid II: Return To The Sea"2000)
これもまともにカヴァーしたのでは全く面白みの伝わらない曲です。リンゴのとぼけた味をさらに増幅させるカヴァーはこれしかありません。ディズニー映画「リトル・マーメイド2」のサントラより、カニのセバスチャン(声:サミュエル・E・ライト)が歌うカヴァー・ヴァージョン。もちろんジャマイカ英語です。カニに歌われたのではもうどうしようもないでしょう。楽しいことこの上なし、最強のカヴァーです。

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6) I Want You (She's So Heavy) / Alvin Lee (from"Nineteen Ninety Four"1993)
ブッカー・T & MG’s による、イントロで思わず「く~っ」と唸りたくなるブルージーなインスト・カヴァーも素晴らしいのですが、ここは元テン・イヤーズ・アフターの早弾きギタリストのソロでいってみましょう。10分近い長尺のトラック、後半は弾きまくりのギター・ソロが圧巻で、スライド・ギターでジョージが参加しているところもポイントが高い。分厚い音の壁がぐるぐる回る感覚が、原曲をさらにパワーアップさせたようで名演。

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7) Here Comes The Sun / George Benson (from"The Other Side Of The Abbey Road"1969)
名曲ぞろいの「アビー・ロード」のカヴァー選びは難行苦行です。この曲の数ある名カヴァーの中から、たった1曲選ばなくてはいけないなんて…。このジョージ・ベンソンの「アビー・ロード」カヴァー・アルバムから選んだのは、A面最後の「I Want You」が終わって、レコードをひっくり返して流れてくるときに一番ホッとするのはこんな音なのではないか…という、コンピレーションとしての流れで考えたからです。ギターではなく、柔らかくあたたかいピアノとストリングスで包み込んでくれるようなアレンジがいい。最後まで残っていたもうひとつの候補は、ニーナ・シモンによるやはりピアノ主体の素晴らしいカヴァー(「Here Comes The Sun」収録)。カヴァーとしての完成度はこちらの方が上かもしれません。これは本当に決め難い!

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8) Because / Elliot Smith (from original soundtrack "American Beauty"1999)
ビートルズ・カヴァーの世界の深遠さに気付き、ビートルズのカヴァーを全部違う人で集めてみようかな…と私が思ったきっかけは、このエリオット・スミスのカヴァーを聴いたことでした。映画の中での使われ方も印象的でしたが、原曲ではジョン、ポール、ジョージが歌っている三声のハーモニーを、たったひとりで多重録音したこのカヴァーは、宝石のような輝きを放っています。たとえ、その後のエリオット・スミスの悲劇を知らなくても、この悲しく美しいサウンドに心が動かされない人はいないでしょう。そしてそれは何よりも、原曲の美しさでもあるのです。必聴。

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9) You Never Give Me Your Money / Sarah Vaughan (from"Songs Of The Beatles"1981)
このアルバム後半のメドレーの気持ちの良い「流れ」を崩さないことは、カヴァー・コンピレーションを作る上でも気をつけたいところです。そこでサラ・ヴォーンの登場。TOTOのメンバーをはじめとする西海岸のクロスオーヴァーのミュージシャンをバックに、サラが気持ち良くビートルズ・ナンバーを歌い上げるこのアルバムは、実は私のお気に入りの1枚でもあります(ゴリゴリのジャズ・ファンには嫌われそうですが)。1曲1曲のアレンジがかなり斬新で、これはマーティー&デヴィッド・ペイチ父子のお仕事。立派です。この曲も中間部でリラックスした4ビートになるところがとても洒落ています。

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10) Sun King / noon (from"Apple of her eye りんごの子守唄"2005)
気持ち良い流れを受けて始まるのが、大阪出身のジャズ・シンガー noon による、さらに心地よいカヴァー。管楽器とオルガンをフィーチュアしたいかにも鈴木惣一朗的なバックに、noon のけだるいヴォーカルがたゆたう、南国の午睡のようなトラックです。とくに後半のスペイン語の部分は完全にシエスタ・モード。

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11) Mean Mr. Mustard / The Receiver (from"It Was 40 Years Ago Today: A Tribute To The Beatles"2004)
「Polythene Pam」のイントロで始まるので一瞬ギョッとしますが、始まるのは「Mean Mr. Mustard」。その後も「Polythene Pam」のイントロ・フレーズを織り交ぜながらがむしゃらに突き進む、轟音ギターによる素晴らしいオルタナ・カヴァー。このバンドについては全然知りませんが、フー・ファイターズの感じにも似ていて、気持ちいい。メドレーのターニング・ポイントを見事に作り出しています。

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12) Polythene Pam / Roy Wood (from original soundtrack "All This And World War II"1976)
続くのは元ムーヴ、ELOの奇才ロイ・ウッドによるカヴァー。イントロからしてセカンド・ライン・ファンクでぶっ飛んでいますが、最後の方のギターとオケによるプログレ的からみもわけわからず凄い。どうしたらこんなのを思いつくのかよくわからない、変態なアレンジです。

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13) She Came In Through The Bathroom Window / The Youngbloods (from"High On A Ridge Top"1972)
この曲のカヴァーといえば有名なのはやっぱりジョー・コッカーですが、ジョー・コッカーは「With A Little Help From My Friends」で既出なので残念ながらここでは出せません。でも素晴らしい演奏なのでぜひお聴きください。その代わりにご紹介するのが、アメリカのフォーク・ロック・バンド、ヤングブラッズのカヴァーです。後期にはサイケデリックな演奏も繰り広げた彼らですが、このラスト・アルバムに収められたカヴァーは4ビートの軽快なジャズ的演奏。カントリーの要素もあり、飄々としています。

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14) Golden Slumbers / Ben Folds (from original soundtrack "I Am Sam"2001)

メドレー後半の冒頭を飾る名曲は、「アイ・アム・サム」のサントラに収められたベン・フォールズのカヴァーが素晴らしい出来です。ピアノの弾き語りに始まってサビで盛り上がるちょっと大げさな曲調が、ベン・フォールズの芸風に見事にはまっていると思うのですが、いかがでしょうか。

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15) Carry That Weight / Noah And The Whale (from"Abbey Road Now!"2010)
前述した Mojo の今年のビートルズ特集付録CDからの拾いものがこれ。メドレーの「つなぎ」的な位置づけの曲でありながら、どこか終焉を予感させるはかなさもあり、選曲はなかなか難しいところです。カーメン・マクラエのヴァージョンが素晴らしい出来なのですが、既出の人なのでここでは選ぶことができません。困っていたところに現れたのが、このイギリスのインディー・フォーク・バンドの幻想的な短いカヴァーです。メドレーの流れを壊さないようにリンクさせながらも、オリジナルとは全く違った響きを作り出している、得難いカヴァーでした。

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16) The End / London Symphony Orchestra (from original soundtrack "All This And World War II"1976)
ついにメドレーも最後までたどり着きました。ここまで来たら大きな花火を打ち上げてもいいのでは…ということで大袈裟なこのカヴァーを。もともとジョージ・マーティンはこの曲においてシンフォニックな表現をしたかったらしいので、オーケストラによるこのド派手な演奏も流れにはまります。原曲よりも少し長いドラム・ソロが聴けるフィル・コリンズのヴァージョン(ジョージ・マーティンの「In My Life」に収録)も捨てがたいですが、フィルは「Tomorrow Never Knows」で既出なので断念。

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17) Her Majesty / Tok Tok Tok (from"50 Ways To Leave Your Lover"1999)
ビートルズ・ファンのお楽しみ。このおまけトラックにもカヴァーがあるというのは素晴らしいことです。ドイツのアコースティック・ソウル・デュオ、Tok Tok Tok のメジャー・デビュー盤より。ここではダブルベースのみをバックに歌っていますが、最後が「ブチッ」と切れるところまで見事に真似してあってニヤリとします。

世間は「赤盤」「青盤」リマスターで再びビートルズの周辺が賑やかになってきており、喜ばしいことです。私は3歳ぐらいから「赤」と「青」を子守唄代わりにして育ってきました…。次回は「Let It Be」。

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