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Covered Beatles (13) Yellow Submarine 編

ビートルズのオリジナル曲を、全曲違う人のカヴァーで探し続ける Covered Beatles。ついに問題作「Yellow Submarine」に到達です。なんで問題作かといえば、このアルバム(実際には映画「イエロー・サブマリン」のサントラ)はビートルズの曲が半分(LPで言えばA面)だけ、6曲しか入っていないからです。しかもそのうち2曲は既発曲、残りの曲も今の感覚でいえば限りなくアウトテイクに近いものです。そのため、「ビートルズのアルバムで最後に買うのはこれ」というありがたくない評判まで生まれてしまいました。しかし、アウトテイクすれすれといえども、そこはやはりビートルズ。いずれも名曲であることにいささかの疑いもありません。そして既発の2曲についても、以前紹介したのとは別のカヴァー・ヴァージョンをご紹介しましょう。

Revolution






1) Yellow Submarine / Cathy Barberian (from "Revolution" 1967)
「リヴォルヴァー」のときには迷いなく金沢明子の「イエロー・サブマリン音頭」を選びましたが、もうひとつ選ぶとすればこれでしょう。意表をついたオープニング・トラック。一時期ルチアーノ・ベリオの妻でもあり、比類なきヴォーカル・パフォーマンスによって現代音楽界に大きな足跡を残したキャシー・バーベリアンのビートルズ・カヴァー集からの選曲です。疑似古典派風の伴奏でオペラティックに歌う異色のカヴァーは、現代音楽ファンの楽しみにしておくのは勿体ない面白さです。「リヴォルヴァー」のパロディであるオリジナル・スリーヴもポイント。2004年にはインタビューやライヴ音源を追加、「Beatles Arias」としてCD化されています。

Seul_en_vie






2) Only A Northern Song / Michel Drucker Experience (from "Seul En Vie" 2006)
2曲目はハードなタッチで。フランスのロック・シンガー、ミシェル・ドラッカーのカヴァーです。オリジナルはジョージのちょっと中途半端なサイケ曲ですが、このヴァージョンのようにアコギでジャカジャカ始めると、やたらかっこいい曲に聴こえてくるから不思議です。もうひとつ面白いと思ったカヴァーは Yonder Mountain String Band のライヴ音源(ネットでのみ販売)。コンピレーションの流れとしてはよくなかったので選びませんでしたが、完全にカントリー・タッチに変貌した異色のヴァージョンです。

Korlassa_krokridandi






3) All Together Now / Kolrassa Krókríđandi (from "Köld Eru Kvennaráđ" 1996)
アイスランドの有名ガールズ・バンド、コルラッサ・クロークリザンディ(英語でのバンド名はBellatrix)の4枚目のアルバムより。お子様ソング、あるいは牧歌的解釈に陥りがちなこの曲を、パンキッシュでもある強烈なロックに仕立て上げるところ、並みの感性ではありません。もう解散してしまいましたが、凄いバンドでした。オリジナル通り、最後のテンポアップもアドレナリン出まくり。

Criminal_tango






4) Hey Bulldog / Manfred Mann's Earth Band (from "Criminal Tango" 1986)
1960年代から活躍するあのマンフレッド・マンが、バンド遍歴の果てに辿りついた、マンフレッド・マンズ・アース・バンドの80年代のアルバムから選曲。このヴァージョンのタイトルは「Bulldog」となっていますが、もちろん「Hey Bulldog」のカヴァーです。いかにも80年代的なシンセ音ですが、そこがまた面白い。これまた異色のカヴァー。

L






5) It's All Too Much / Steve Hillage (from "L" 1976)
ゴングのギタリストとしても有名なスティーヴ・ヒレッジのセカンド・ソロ・アルバムから。プロデュースはトッド・ラングレンで、このジョージの名曲を選んだあたりにもトッドのセンスが感じられる。基本的には完コピで進むところがいかにもトッドらしいが、曲が終りまできていきなりブレイク、スティーヴのギター・ソロが延々と始まるところがポイント。これがまた凄くかっこいい。

Live_in_living_09






6) All You Need Is Love / 羊毛とおはな (from "Live in Living '09" 2009)
ラストは再び既発曲。「マジカル・ミステリー・ツアー」ではリンデン・デヴィッド・ホールの名カヴァーを選びましたが、ここでは日本が誇るアコースティック・デュオ、羊毛とおはなのヴァージョンをどうぞ。CMでも使われていましたが、千葉はなの甘い声と、羊毛くんのシンプルなギターの取り合わせがいい感じです。まず書店「ヴィレッジ・ヴァンガード」でのライヴ・ヴァージョンが出た(「ヴィレンジ・ヴァンガード」限定発売)のですが、その後にこのスタジオ録音もリリースされました。ほんわかした心温まるカヴァー。

というわけで「イエロー・サブマリン」はあっという間に終わってしまうのです。さて、「パスト・マスターズ」を入れてもあと3枚。乞うご期待。

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Mutter, Mutter!

Mutterコンサート・ゴアとしての今年のテーマは「美人ヴァイオリニスト」。その美人ヴァイオリニスト・シリーズ、第3回目にして大物登場です。「女王」アンネ=ゾフィー・ムター。私としても初ナマとなったムターは、新譜発売に合わせてのオール・ブラームス・プロです。

2010年4月17日  兵庫県立芸術文化センター大ホール

ブラームス: ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 Op.100
ブラームス: ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 Op.78 「雨の歌」
ブラームス: ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 Op.108

ヴァイオリン: アンネ・ゾフィー・ムター
ピアノ: ランバート・オルキス


決して小さいホールではないのですが、1階席は満員。2階席以上には空きもありましたが、かなり埋まっているようでした。先日のサントリーホールのレーピンのリサイタルとはえらい違いで、ムターがケタ違いのビッグネームであることを改めて認識します。ただ個人的には、私はムターの録音をそれほど愛聴してきたわけではありません。録音を聴く限り、確かに技術的には安定しているし、素晴らしい演奏もあるのだけれど、「大好きなヴァイオリニストか?」と問われれば、そこまでではない、というのが私のこれまでのムター評でした。でもいつもの持論の通り、クラシックの演奏家は実演を聴かなければ本当のことはわからないのです。

このプログラムの順番は、最近発売されたCDと同じです(2009年録音、共演者も同じ)。ムターには1982年の録音(ピアノはアレクシス・ワイセンベルク)もあり、事前にこの両方を聴き比べてみたのですが、このふたつの録音はかなり解釈が違います。旧録音はバランスよくきっちりとまとまった演奏。ドイツ流儀の室内楽の良いところが出ていますが、逆にいえばそれほど主張の強い演奏ではない。一方、新録音は室内楽的な親密さを重視しているところは同じですが、表現は非常にロマンティック。粘っこいポルタメントなど、ここまでやるか?と思うぐらいの大胆な音使いをしているところがあります。これがムター自身の内面の変化を反映しているものであることは確かでしょう。

ムターは鮮やかなブルーのドレスで登場(公演チラシと同じもの。最近のメンデルスゾーンのCDジャケもこのドレス)。最初の第2番のソナタは3曲の中では最も「前向き」で、ピアノが前面に出る場面が多い曲なので、スターターとしては最適な選曲です。さて、まず目を奪われたのが、素晴らしいボウイング。肩・肘・手首という3つの関節を完璧にコントロールした、模範的で無駄のない動きです。スポットライトを受けて輝く、白くひきしまった腕の運動自体が、とても美しく感じられます。そして左手も完璧。音程に甘さがなく、重音もまったく濁りません。さらに、第3楽章冒頭のスルGの響きも素晴らしかった。ピアノのオルキスがまた巧い。決して鳴らしすぎて出しゃばることがなく、ヴァイオリンとピアノの滑らかな対話の流れの中で音楽を形作っていきます。

2曲目は第1番。明らかにクララ・シューマンとの思い出をテーマにした作品で、ブラームスの後ろ向きな世界にどっぷりと入っていきます。冒頭からかなり遅いテンポ、そして霞がかかったような淡い音色によって、たっぷりとしたノスタルジーが表現されます。さらに、効果的なノン・ヴィブラートの使用。これは新録音でも面白いと思ったポイントで、とくに第2楽章終結部(ピウ・アンダンテ以降)の旋律には、過去の亡霊―葬り去ることのできない想いのようなもの―がゆらゆらと立ち現れたような不思議な感覚があります。音楽はときどきふっと立ちどまり、また静かに始まる。この演奏を聴きながら、やはり私はムター自身の人生を重ね合わせずにはいられませんでした。

休憩後に3番。最もブラームスらしい、人生の黄昏を感じさせる音楽です。ムターは冒頭からかなり速いテンポをとり、晩年のブラームスの中に渦巻く暗い情熱を表します。音色も一転してクリア。第2楽章のアダージョはじっくりと聴かせますが、クライマックスの重音の個所でも煽りすぎることなく、あくまで寂寥感が基調にあること(あきらめとしての詠嘆)であることを明確に打ち出します。このあたり、実に見事な解釈。フィナーレは再びピアノと一緒に情熱的に突き進み、息のあった完璧なクライマックスを築きます。

あー、凄いです。これは凄かった。たまたま先日レーピンで3番を聴いていたので、どうしても比較してしまうのですが、格が違うという言葉を使いたくなります。確かにレーピンはちょっと調子が悪かったのですが、それがなくても音楽の密度が全然違う。オルキスに比べればゴランは弾き過ぎだし、デュオそのものが室内楽というよりもコンサートホールを意識した派手な表現になってしまっていた。どちらがブラームスがこのソナタに込めた感情を的確に表現していたかといえば、それは間違いなく今回のムターの演奏でしょう。

盛大な拍手に応え、何とアンコールは5曲(!)。

ブラームス: ハンガリー舞曲第2番
ブラームス: ハンガリー舞曲第1番
ブラームス: 子守唄
マスネ: タイスの瞑想曲
ブラームス: ハンガリー舞曲 第7番

ハンガリアン・ダンスの物凄いボウイングも聴きものでしたが、私が強い感銘を受けたのは「タイス」。これは、いわば手垢のついたようなアンコール・ピースです。彼女であればもう何千回、何万回と弾いてきたような曲で、軽く流すこともできるはずです。しかし、そこにムターは深い感情を込めて、音を楽器から絞り出すようにじっくりと丁寧に音楽を紡ぎあげていました。「タイス」にここまで心を動かされるとは。プロの表現者とはかくあるべきです。一気にファンになってしまいました。

文句なくスタンディング・オヴェーションに相当する演奏だったと思います。終演後はサインを求める長蛇の列。さすがにちょっとお疲れ気味ではありましたが、オルキスに「スーパースターになったみたいね」なんて呟きながらサインをするムターは、やっぱり素晴らしいプロフェッショナルなのでした。

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Covered Beatles (12) The Beatles [Disc 2] 編

さて、引き続き「ホワイト・アルバム」、2枚目です。

Map_one






1) Birthday / Cavedoll (from "Map One" 2008)
アメリカのインディー・バンド、ケイヴドールは実質的には Camden Ray Chamberlain という人のソロ・プロジェクトです。ジャンルとしてはエレクトロ・デジ・ロックという感じでしょうか。打ち込みをベースにしながらも、ロック的な躍動感を曲に吹き込むことに成功しています。僕はこのヴァージョンを itunes で知ったのですが、このある意味非常に単純な曲が、実に現代的なサウンドに生まれ変わっていることに驚きました。メタリックなギター音が魅力的。「C面」オープニングにふさわしい快作。

Photo






2) Yer Blues / 椎名林檎 (from "唄ひ手冥利 ~其ノ壱~" 2002)
初めて聴いたときからこのカヴァーには強く惹かれるものがありました。曲も彼女向きだと思いますが、何といってもバックの「虐待グリコゲン」の演奏が圧倒的。ノイジーで暴力的、うねるようなグルーヴを生み出しています。それでいてちゃんと、ドリーミーなパートも入れてメリハリをつけ、ひねりを効かせている。完璧です。産休明けの椎名林檎が発表した2枚組のカヴァー・アルバムのうち、亀田誠治がプロデュースした「亀パクトディスク」の方に収録。

I_am_sam_2 






3) Mother Nature's Son / Sheryl Crow (from soundtrack "I Am Sam" 2001)
何度か登場していますが、ビートルズ・カヴァー盛りだくさんのサントラ「アイ・アム・サム」より、シェリル・クロウのカヴァー。バンジョーやフィドルも入ったカントリー・タッチの解釈が、ハスキーなシェリルの声にマッチしています。この曲のカヴァーで僕がもうひとつ好きなのは、ニルソンのヴァージョン(名盤「ハリー・ニルソンの肖像」収録)。これも全くてらいのない解釈ですが、ニルソンの声の素晴らしさがよくわかる名カヴァーだと思います。

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4) Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey / My Brightest Diamond (from "The White Album Recovered No. 0000002" 2008)

森高千里によるカヴァー(1994年リリースの「Step By Step」に収録)も悪くないのですが、音楽としての面白さという点でこちらのヴァージョンを選びました。雑誌「Mojo」の付録CD(インディーズ・アーティストたちによるホワイト・アルバム全曲カヴァー)に収められた、マイ・ブライテスト・ダイアモンドによるカヴァー。マイ・ブライテスト・ダイアモンドはシャラ・ウォルデンによるソロ・プロジェクトです。この無意味にノリノリのロックンロールを脱構築した知的な解釈で、エンディングにジョージ・マイケルの「Monkey」を持ってきたところがポイント。この他には、前にも挙げましたが、ファッツ・ドミノのヴァージョンも楽しいと思います。

Out_of_the_sinking






5) Sexy Sadie / Paul Weller (from single "Out of The Sinking" 1994)

ポール・ウェラーによるビートルズ・カヴァーは、どれも本当に「愛がある」と感じます。ちょっとひねった選曲もいいし、何よりも演奏に熱いハートがある。もちろん、ウェラーのヴォーカルの魅力も大きい。ということで、このマキシ・シングルに収められたカヴァーも必聴の出来です。ウェラーには「ドント・レット・ミー・ダウン」のカヴァーもあり、これまた秀逸。

Shout_at_the_devil_2 






6) Helter Skelter / Mötley Crüe (from "Shout At The Devil" 1983)
この曲は大物アーティストによる有名なカヴァーが結構あります。エアロスミス(ほとんどコピー)、スージー&ザ・バンシーズ(呪術的で強烈)、パット・ベネター(典型的なアメリカン・ロックだが内容は充実)、U2(ライヴ、やや独自路線)、オアシス(意外性がなくていまいち)等々。しかしここでは、この曲が「ヘヴィー・メタルの元祖」と呼ばれることも意識して、80年代LAメタルのスター、モトリー・クルーによるカヴァーを選びましょう。ヘヴィーだけれど実にキャッチーでグラマラス。ヴィンス・ニールのハイ・トーン・ヴォーカルはアピール度抜群だし、トミー・リーの安定したドラムがサウンドの要になっています。LAメタルからビートルズへの返答。

This_hungry_life






7) Long Long Long / Tanya Donelly (from "This Hungry Life" 2006)
スローイング・ミュージズ、ブリーダーズ、ベリーで活躍してきたタニヤ・ドネリーのソロ・ライヴ・アルバムより。ジョーン・ワッサーのヴァイオリンを大きくフィーチュアしたアレンジが新鮮で、ジョージらしい詩情に満ちたこの曲の魅力を改めて感じさせてくれます。そしてやっぱり、タニヤの声が素敵。ところで、エリオット・スミスによるカヴァー(ライヴ)がブートで出ているらしいです。聴いてみたいなぁ。

Sound_of_a_rebel






8) Revolution 1 / Outlandish (from outtake of "Sound of A Rebel" 2009)

「レヴォリューション」のカヴァーではなく、「レヴォリューション1」のカヴァーを探し出さなくてはいけないという点で、Covered Beatles 企画としては予想もしなかった困難に直面しました。いやー大変だった。一度は Neil Cowley Trio のジャズ・カヴァーを選曲してみたのですが、やっぱり違うかなぁ・・・という思いが抜け切れず、さらなる探索を続けました。そして発見。これですね。これ以上の選曲はありません。デンマークのヒップ・ホップ・トリオ、アウトランディッシュによるカヴァー。移民としてモロッコ、パキスタン、カリブのルーツを持ち、政治的・社会的メッセージを忘れない彼らの「レヴォリューション1」はリスナーの心にずっしりと響きます。ところでこのトラック、ネット上には出回っていますが、公式にはリリースされていないアウトテイクなんですね。まあ、ライヴではやっているし、そのうち出るでしょう。

Love_warriors






9) Honey Pie / Tuck & Patti (from "Love Warriors" 1989)
ギターのタック・アンドレスと、ヴォーカルのパティ・キャスカートのおしどり夫婦デュオ、タック&パティのセカンド・アルバムに収められたカヴァー。彼らは他にも「アイ・ウィル」や「イン・マイ・ライフ」をカヴァーしていますが、いずれもこのデュオならではのウォームな感覚と洗練されたジャズ・テイストを併せ持った名ヴァージョンです。ジャズ・ギターと声だけの、シンプルだけれど完成度の高いヴァージョン。

It_was_40_years_ago_today






10) Savoy Truffle / The Dons (from "It Was 40 Years Ago Today: A Tribute To The Beatles" 2004)
カナダのインディーズ・レーベルによるトリビュート盤からの選曲。この The Dons というバンドについて僕はほとんど何も知りません。ただ、ブラス・セクションが大活躍する原曲を完全にラウドなギター・ロックにしてしまったロック魂を買います。実にパワフルな炸裂する「サヴォイ・トラッフル」です。ジョージのトリビュート盤に入っていたゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツのカヴァーがいまいちだったのは残念。あと、エラ・フィッツジェラルドのヴァージョンはソウル感に溢れていて秀逸。

Songs_of_love_and_empire






11) Cry Baby Cry / Julie Ritter (from "Songs of Love and Empire" 1999)
この曲のカヴァー・ヴァージョンとしてはフールズ・ガーデンのものが有名ですが、僕にはやや凡庸に聴こえます。むしろLAのオルタナティヴ・バンド、メアリーズ・ダニッシュのヴォーカルだったジュリー・リッターのヴァージョンの方が完成度が高いのではないでしょうか。ジョンならではのけだるい感覚を女声におきかえつつ、現代的なサウンド・プロダクションでまた少し違う世界を開いている感じがします。ソロ・デビュー・アルバムに収録。

Rev_9






12) Revolution 9 / The Shazam (from "Rev 9" 2000)
「レヴォリューション9」をカヴァーする、ということはいったいどういうことなんでしょうか。ご存じの通り、原曲はジョン・レノンとヨーコ・オノによるサウンド・コラージュです。普通は「カヴァー」はあり得ないでしょう。しかしながら、「レヴォリューション9」のカヴァーは意外とあるんです。いくつかご紹介。
・Phish (from "Live Phish 13")人気ジャム・バンドによるホワイト・アルバム全曲カヴァーのライヴ盤。演奏は、ライヴという場での「遊び」のようなもの。
・Grunt (from "Fried Glass Onions Vol.3: Memphis Rocks The Beatles")メンフィス系のアーティストによるビートルズ・トリビュート盤に収録。打ち込み系のリズムをバックに様々な演奏の断片をコラージュしたもの。
・Neil Cowley Trio (from "The White Album Recovered No. 0000002")前述の雑誌「Mojo」付録CDに収録されているピアノ・トリオ・ヴァージョン。ちょっとだけアヴァンギャルドなピアノ・トリオといった感じ。
・Fabio KoRyu Calablo (from "Albume Bianco") イタリアのウクレレおじさんによるホワイト・アルバム全曲トリビュート盤より。ウクレレを逆回転したりしている。
・Ian Cussik, Heiko Effertz & Mdax Cohen (from "Wish We Were The Beatles: A Tribute To White Album")ネット上でのみ販売されている、完コピ系プロジェクトによる演奏。完コピ系だけにこの曲も比較的「忠実」な感じだが、なぜか少しだけ違う。
もはや何でもあり、という状況ですが、それでも音楽としての良し悪しというのはきちんと存在します。そこで僕が選ぶのは、ナッシュヴィルのバンド、 The Shazam によるカヴァー。プロデュースはブラッド・ジョーンズです。さて、この音楽を何と表現したら良いのか?ビートルズの「レヴォリューション9」を下敷きにしながら、そこからインスパイアされたバンドの演奏を非連続的に編集、ひとつの流れを作り出している、という感じ。あとは聴いてもらうしかないです。お聴き頂ければ、ちゃんと「カヴァー」になっていることがご理解頂けることでしょう。

Apple_of_his_eye






13) Good Night / 細野晴臣 (from "Apple of his eye りんごの子守唄" 2006)
この大作を見事に締めくくる名作を誰のカヴァーで聴くか?考えた末に、女声にするか男声にするかという二者択一に至りました。女声なら文句なくリンダ・ロンシュタット。1996年にリリースしたララバイ集「愛の贈りもの(Dedicated To The One I Love)」に収められているカヴァーで、原曲同様にオーケストラがバック、聴き手をふんわりと包み込むような感覚があります。そして男声ならこの細野晴臣。こちらはピアノと弦楽器のアンサンブルによる親密なバックで(ビューティフルハミングバードの小池光子によるコーラス入り)、ハリーらしい大人の優しさに溢れています。前者がまさに赤ちゃんに向けて歌うときの愛情に満ちているのに対し、後者は大人の心の中に眠るノスタルジーにそっと触れてきます。熟考の末、ここでは後者に軍配を上げました。よく眠れそうです。

だんだんゴールが見えてきました。しかし次回は最大の問題作「イエロー・サブマリン」。

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ちょっと微妙なレーピン

美人ヴァイオリニスト・シリーズ番外編、「美男ヴァイオリニスト・シリーズ」。

ヴァディム・レーピンのリサイタルに行ってきました。大阪ではリサイタルがないので残念だな・・・と思っていたら、ちょうど休みが取れたので、東京にレッツゴー。

2010年4月1日(木) サントリーホール

ヤナーチェク: ヴァイオリン・ソナタ
ブラームス: ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 作品108
R.シュトラウス: ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品18

ヴァイオリン:ヴァディム・レーピン

ピアノ:イタマール・ゴラン

現役の男性ヴァイオリニストの中では、僕が最も買っている奏者のひとりがレーピンです。それは、僕が偏愛するオイストラフにだんだん芸風が似てきたように感じていることが大きいのかもしれません。実演もすでに何回か体験しています。ですが、先に結論から書いてしまうと、今回はちょっと戸惑いました。

彼の美質は十分に発揮されていたのです。ヤナーチェクのソナタから、いつものあたたかく輝かしい美音が鳴っていました。この対等なデュオは即興的な音楽の流れを重視しているようで、テンポを揺らしながらのめりこんでいく解釈もいい。ボウイングも信じられないほど達者。いつもの「若くしてすでに巨匠風」の安定感ある音楽が展開されていました。

ちょっと危ないと思い出したのはブラームスぐらいからでしょうか。あれ、ちょっと音程が不安定かもしれない・・・と思っていたら、感動的な第2楽章の最初のクライマックス(21小節目)、Dの上に3度で乗せる重音を思いっきり外しました。これは実にレーピンらしからぬミス。思わず心の中で「おぉ!」と叫んだほどでした。もちろん2回目(59小節目)はちゃんと決めてきましたが、このあたりから明らかに集中力が切れた感じ。響きは相変わらず美しいのだけれど、いつもの自信たっぷりな音の太さが失われてしまいました。フィナーレはきちんと盛り上げて終わりましたが、やや消化不良。

休憩後にシュトラウスのソナタ。第1楽章は持ち直したかと思ったのですが、第2楽章の中間部後半、ミュートをつける直前の部分でまたも痛恨のミス。「どうしたんだ、ヴァディム!」と叫びたくなりました。そこからまた集中力が落ちた感じで・・・。フィナーレは勢いに任せる方向に舵を切ります。エンディングへとがむしゃらに突き進む感じは、それはそれで非常にスリリングで面白かったと思いますが、最終的にはゴランに救われたという印象です。最後が盛り上がったので盛大な拍手ではありましたが、曲のハートをちゃんと掴み取ったかといえば疑問が残りました。

アンコールは3曲。

ショスタコーヴィチ: 24の前奏曲より 作品34-17(ツィガーノフ編)
バルトーク:ルーマニア民俗舞曲
チャイコフスキー: 感傷的なワルツ


肩の力が抜けてリラックスした分、この3曲ではレーピンらしい余裕のある演奏が復活。ここ数年リサイタルで「ルーマニア民俗舞曲」を聴くことがなぜか多いように思います。レーピンの余裕たっぷりの(ちょっと弾き飛ばす感じもある)演奏も悪くはないのですが、庄司紗矢香の息の詰まるような完璧な演奏と比較してしまうと、やや分が悪いかもしれません。まあ、アンコールにそんなものを求めるほうがどうかしているとは思うのですが。

ということで、僕がこれまで聴いてきたレーピンの実演としては最も「ビミョー」な内容。日本公演も終盤なので疲れていたのかもしれないし、たまたまちょっと調子が悪かったのかもしれない。トッパンホールでのリサイタルは悪くなかったようなので、「まあこんな日もあるよね」ということなのだと思います。次回に期待しましょう。なお、1階席の後方はガラガラ。2階席も結構空席がありました。クラシックのチケットが売れなくなっている現実は最近とみに感じますが、レーピンでもこれか!とちょっとびっくりです。

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