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Covered Beatles (12) The Beatles [Disc 2] 編

さて、引き続き「ホワイト・アルバム」、2枚目です。

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1) Birthday / Cavedoll (from "Map One" 2008)
アメリカのインディー・バンド、ケイヴドールは実質的には Camden Ray Chamberlain という人のソロ・プロジェクトです。ジャンルとしてはエレクトロ・デジ・ロックという感じでしょうか。打ち込みをベースにしながらも、ロック的な躍動感を曲に吹き込むことに成功しています。僕はこのヴァージョンを itunes で知ったのですが、このある意味非常に単純な曲が、実に現代的なサウンドに生まれ変わっていることに驚きました。メタリックなギター音が魅力的。「C面」オープニングにふさわしい快作。

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2) Yer Blues / 椎名林檎 (from "唄ひ手冥利 ~其ノ壱~" 2002)
初めて聴いたときからこのカヴァーには強く惹かれるものがありました。曲も彼女向きだと思いますが、何といってもバックの「虐待グリコゲン」の演奏が圧倒的。ノイジーで暴力的、うねるようなグルーヴを生み出しています。それでいてちゃんと、ドリーミーなパートも入れてメリハリをつけ、ひねりを効かせている。完璧です。産休明けの椎名林檎が発表した2枚組のカヴァー・アルバムのうち、亀田誠治がプロデュースした「亀パクトディスク」の方に収録。

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3) Mother Nature's Son / Sheryl Crow (from soundtrack "I Am Sam" 2001)
何度か登場していますが、ビートルズ・カヴァー盛りだくさんのサントラ「アイ・アム・サム」より、シェリル・クロウのカヴァー。バンジョーやフィドルも入ったカントリー・タッチの解釈が、ハスキーなシェリルの声にマッチしています。この曲のカヴァーで僕がもうひとつ好きなのは、ニルソンのヴァージョン(名盤「ハリー・ニルソンの肖像」収録)。これも全くてらいのない解釈ですが、ニルソンの声の素晴らしさがよくわかる名カヴァーだと思います。

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4) Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey / My Brightest Diamond (from "The White Album Recovered No. 0000002" 2008)

森高千里によるカヴァー(1994年リリースの「Step By Step」に収録)も悪くないのですが、音楽としての面白さという点でこちらのヴァージョンを選びました。雑誌「Mojo」の付録CD(インディーズ・アーティストたちによるホワイト・アルバム全曲カヴァー)に収められた、マイ・ブライテスト・ダイアモンドによるカヴァー。マイ・ブライテスト・ダイアモンドはシャラ・ウォルデンによるソロ・プロジェクトです。この無意味にノリノリのロックンロールを脱構築した知的な解釈で、エンディングにジョージ・マイケルの「Monkey」を持ってきたところがポイント。この他には、前にも挙げましたが、ファッツ・ドミノのヴァージョンも楽しいと思います。

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5) Sexy Sadie / Paul Weller (from single "Out of The Sinking" 1994)

ポール・ウェラーによるビートルズ・カヴァーは、どれも本当に「愛がある」と感じます。ちょっとひねった選曲もいいし、何よりも演奏に熱いハートがある。もちろん、ウェラーのヴォーカルの魅力も大きい。ということで、このマキシ・シングルに収められたカヴァーも必聴の出来です。ウェラーには「ドント・レット・ミー・ダウン」のカヴァーもあり、これまた秀逸。

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6) Helter Skelter / Mötley Crüe (from "Shout At The Devil" 1983)
この曲は大物アーティストによる有名なカヴァーが結構あります。エアロスミス(ほとんどコピー)、スージー&ザ・バンシーズ(呪術的で強烈)、パット・ベネター(典型的なアメリカン・ロックだが内容は充実)、U2(ライヴ、やや独自路線)、オアシス(意外性がなくていまいち)等々。しかしここでは、この曲が「ヘヴィー・メタルの元祖」と呼ばれることも意識して、80年代LAメタルのスター、モトリー・クルーによるカヴァーを選びましょう。ヘヴィーだけれど実にキャッチーでグラマラス。ヴィンス・ニールのハイ・トーン・ヴォーカルはアピール度抜群だし、トミー・リーの安定したドラムがサウンドの要になっています。LAメタルからビートルズへの返答。

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7) Long Long Long / Tanya Donelly (from "This Hungry Life" 2006)
スローイング・ミュージズ、ブリーダーズ、ベリーで活躍してきたタニヤ・ドネリーのソロ・ライヴ・アルバムより。ジョーン・ワッサーのヴァイオリンを大きくフィーチュアしたアレンジが新鮮で、ジョージらしい詩情に満ちたこの曲の魅力を改めて感じさせてくれます。そしてやっぱり、タニヤの声が素敵。ところで、エリオット・スミスによるカヴァー(ライヴ)がブートで出ているらしいです。聴いてみたいなぁ。

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8) Revolution 1 / Outlandish (from outtake of "Sound of A Rebel" 2009)

「レヴォリューション」のカヴァーではなく、「レヴォリューション1」のカヴァーを探し出さなくてはいけないという点で、Covered Beatles 企画としては予想もしなかった困難に直面しました。いやー大変だった。一度は Neil Cowley Trio のジャズ・カヴァーを選曲してみたのですが、やっぱり違うかなぁ・・・という思いが抜け切れず、さらなる探索を続けました。そして発見。これですね。これ以上の選曲はありません。デンマークのヒップ・ホップ・トリオ、アウトランディッシュによるカヴァー。移民としてモロッコ、パキスタン、カリブのルーツを持ち、政治的・社会的メッセージを忘れない彼らの「レヴォリューション1」はリスナーの心にずっしりと響きます。ところでこのトラック、ネット上には出回っていますが、公式にはリリースされていないアウトテイクなんですね。まあ、ライヴではやっているし、そのうち出るでしょう。

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9) Honey Pie / Tuck & Patti (from "Love Warriors" 1989)
ギターのタック・アンドレスと、ヴォーカルのパティ・キャスカートのおしどり夫婦デュオ、タック&パティのセカンド・アルバムに収められたカヴァー。彼らは他にも「アイ・ウィル」や「イン・マイ・ライフ」をカヴァーしていますが、いずれもこのデュオならではのウォームな感覚と洗練されたジャズ・テイストを併せ持った名ヴァージョンです。ジャズ・ギターと声だけの、シンプルだけれど完成度の高いヴァージョン。

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10) Savoy Truffle / The Dons (from "It Was 40 Years Ago Today: A Tribute To The Beatles" 2004)
カナダのインディーズ・レーベルによるトリビュート盤からの選曲。この The Dons というバンドについて僕はほとんど何も知りません。ただ、ブラス・セクションが大活躍する原曲を完全にラウドなギター・ロックにしてしまったロック魂を買います。実にパワフルな炸裂する「サヴォイ・トラッフル」です。ジョージのトリビュート盤に入っていたゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツのカヴァーがいまいちだったのは残念。あと、エラ・フィッツジェラルドのヴァージョンはソウル感に溢れていて秀逸。

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11) Cry Baby Cry / Julie Ritter (from "Songs of Love and Empire" 1999)
この曲のカヴァー・ヴァージョンとしてはフールズ・ガーデンのものが有名ですが、僕にはやや凡庸に聴こえます。むしろLAのオルタナティヴ・バンド、メアリーズ・ダニッシュのヴォーカルだったジュリー・リッターのヴァージョンの方が完成度が高いのではないでしょうか。ジョンならではのけだるい感覚を女声におきかえつつ、現代的なサウンド・プロダクションでまた少し違う世界を開いている感じがします。ソロ・デビュー・アルバムに収録。

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12) Revolution 9 / The Shazam (from "Rev 9" 2000)
「レヴォリューション9」をカヴァーする、ということはいったいどういうことなんでしょうか。ご存じの通り、原曲はジョン・レノンとヨーコ・オノによるサウンド・コラージュです。普通は「カヴァー」はあり得ないでしょう。しかしながら、「レヴォリューション9」のカヴァーは意外とあるんです。いくつかご紹介。
・Phish (from "Live Phish 13")人気ジャム・バンドによるホワイト・アルバム全曲カヴァーのライヴ盤。演奏は、ライヴという場での「遊び」のようなもの。
・Grunt (from "Fried Glass Onions Vol.3: Memphis Rocks The Beatles")メンフィス系のアーティストによるビートルズ・トリビュート盤に収録。打ち込み系のリズムをバックに様々な演奏の断片をコラージュしたもの。
・Neil Cowley Trio (from "The White Album Recovered No. 0000002")前述の雑誌「Mojo」付録CDに収録されているピアノ・トリオ・ヴァージョン。ちょっとだけアヴァンギャルドなピアノ・トリオといった感じ。
・Fabio KoRyu Calablo (from "Albume Bianco") イタリアのウクレレおじさんによるホワイト・アルバム全曲トリビュート盤より。ウクレレを逆回転したりしている。
・Ian Cussik, Heiko Effertz & Mdax Cohen (from "Wish We Were The Beatles: A Tribute To White Album")ネット上でのみ販売されている、完コピ系プロジェクトによる演奏。完コピ系だけにこの曲も比較的「忠実」な感じだが、なぜか少しだけ違う。
もはや何でもあり、という状況ですが、それでも音楽としての良し悪しというのはきちんと存在します。そこで僕が選ぶのは、ナッシュヴィルのバンド、 The Shazam によるカヴァー。プロデュースはブラッド・ジョーンズです。さて、この音楽を何と表現したら良いのか?ビートルズの「レヴォリューション9」を下敷きにしながら、そこからインスパイアされたバンドの演奏を非連続的に編集、ひとつの流れを作り出している、という感じ。あとは聴いてもらうしかないです。お聴き頂ければ、ちゃんと「カヴァー」になっていることがご理解頂けることでしょう。

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13) Good Night / 細野晴臣 (from "Apple of his eye りんごの子守唄" 2006)
この大作を見事に締めくくる名作を誰のカヴァーで聴くか?考えた末に、女声にするか男声にするかという二者択一に至りました。女声なら文句なくリンダ・ロンシュタット。1996年にリリースしたララバイ集「愛の贈りもの(Dedicated To The One I Love)」に収められているカヴァーで、原曲同様にオーケストラがバック、聴き手をふんわりと包み込むような感覚があります。そして男声ならこの細野晴臣。こちらはピアノと弦楽器のアンサンブルによる親密なバックで(ビューティフルハミングバードの小池光子によるコーラス入り)、ハリーらしい大人の優しさに溢れています。前者がまさに赤ちゃんに向けて歌うときの愛情に満ちているのに対し、後者は大人の心の中に眠るノスタルジーにそっと触れてきます。熟考の末、ここでは後者に軍配を上げました。よく眠れそうです。

だんだんゴールが見えてきました。しかし次回は最大の問題作「イエロー・サブマリン」。

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