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Covered Beatles (11) The Beatles [Disc 1] 編

不定期更新でお届けしている Covered Beatles 、ついに2枚組の大作「The Beatles」(通称「ホワイト・アルバム」)に突入です。余談ですが、昔はダブル・アルバムというのは結構な「大作」でした。今はCDを一度交換するだけですが(いや、ひょっとしたら楽曲ダウンロードで、CD交換すらなく全曲通しで聴けてしまうかもしれない)、昔はA面聴いて、ひっくりかえしてB面聴いて、レコード取り替えてC面聴いて、またひっくりかえしてD面聴く・・・という聴き手の「作業」が必要だったわけです。必然的に、それぞれの面ごとの統一的な印象のようなものが(作り手の意図があるかどうかにかかわらず)作り出されていました。CD時代になってからは、こういうA面、B面・・・という感覚は希薄になっています。しかし、レコード時代の音楽家は必ずこの感覚を持ってアルバムを制作していたわけで、それを念頭に置くと、当時のアルバムの意味合いがよりよく理解できると思われます。閑話休題。

Witchtaito






1) Back In The U.S.S.R. / John Schroeder (from "Witch-Tai-To" 1971)
オープニング・トラックは、イギリス出身のアレンジャー&プロデューサーとして知られるジョン・シュローダーによるリラックスしたカヴァーで。ポップス・オーケストラによるラウンジ感溢れるアレンジが秀逸です。この人、クラブ時代になってから再注目されているようですが、さもありなん。グル―ヴィーです。

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2) Dear Prudence / Siouxsie & The Banshees (from "Hyaena" 1984)

これは有名なカヴァー。イギリスのパンク/ニューウェイヴ・バンドのスージー&ザ・バンシーズによるヴァージョンです。けだるいスージーの歌、キュアーにも通じるキラキラした透明なギターの響き、そして音楽がぐるぐる回る酩酊感(look around round round…)が印象的。スージー&ザ・バンシーズはファースト・アルバムでも「ヘルター・スケルター」をカヴァーしていて、こちらも必聴です。

Glass_onion






3) Glass Onion / Alif Mardin (from "Glass Onion" 1969)
惜しくも2006年にこの世を去ったアトランティック・レコードの名プロデューサー、アリフ・マーディンの同名ソロ・アルバムから。インストですが、さすがにソウル感たっぷりで楽しめます。それにしても、なぜこの曲だったのでしょうか?

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4) Ob-La-Di, Ob-La-Da / The Bedrocks (from 7"single "Ob-La-Di, Ob-La-Da / Lucy" 1968)

有名な曲だけにカヴァーも多く、日本では車のCMで使われたユッスー・ンドゥールのヴァージョンなどがよく知られたものでしょうか。しかし、オリジナル発表後にすぐさま現れたこの「先祖帰り」ヴァージョンに勝てるものはなかなかありません。ザ・ベッドロックスは、西インド諸島出身のメンバーによってイギリスで結成されたバンド。スカのリズムを使ったこの曲を、スカの本場からの移民がカヴァーして大ヒットとなりました(Columbia DB 8516)。「もともとスカなんだからスカにしました(ついでに英語もジャマイカ風に)」という、ある意味すごくナチュラルな、この曲のカヴァーヴァージョンの原点。

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5) Wild Honey Pie / Pixies (from "Pixies at the BBC"
1998)
「ワイルド・ハニー・パイ」のカヴァー・ヴァージョンなんてないだろうと思いきや、あるんだなこれが。しかもグランジのオリジネイター、ピクシーズだ!フランク・ブラックはどうしてもこの曲がやりたかったんでしょう、BBCのジョン・ピールの番組に最初に出演した時(1988年5月3日、放送は16日)にぶちかましています。凄いです。

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6) The Continuing Story of Bungalow Bill / Young Blood (from 7"single "The Continuing Story of Bungalow Bill / I Will" 1969)
ハード・ロック界の名ドラマー、故コージー・パウエルが参加していたことで知られる英国バーミンガムのバンド、ヤング・ブラッドのカヴァー。例によってオリジナル・シングル(Pye 7N 17696)のジャケ写が見当たらなかったため、収録されているコンピレーション「All You Need Is Covers」のジャケットを掲載しておきます。ブルース・ロックとアート・ロックの中間のようなサウンドですが、やたらドラムだけが叩きまくってオリジナリティを主張しています。コージー恐るべし。

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7) While My Guitar Gently Weeps / The Jeff Healey Band (from "Hell To Pay" 1990)
2008年に惜しくもガンのために亡くなった盲目のギタリスト、ジェフ・ヒーリーによるカヴァー(なんだか今回は最近亡くなっている人が多いですね)。膝の上にギターを置き、上から弦を押さえるというラップ・スティールのような独特の奏法(しかも時々立ち上がったりする)で知られていますが、素晴らしいブルーズ・ギターです。このレコーディングにはジョージ本人も参加していますが、オリジナルを完全に食ってしまう熱演にジョージも満足したことでしょう。

Pod







8) Hapapiness Is A Warm Gun / The Breeders (from "Pod" 1990)

ピクシーズのキム・ディールとスローイング・ミュージズのタニヤ・ドネリーのプロジェクト、ザ・ブリーダーズのファースト・アルバムに収められたカヴァー。しかもプロデュースはスティーヴ・アルビニ!マッチを擦るSEで始まるトラックは、暴力性、猥雑さ、焦燥感、そして刹那的な感情も入っていて白眉。フィードバックで終わるエンディングもいい感じです。なお、元ちとせもこの曲をカヴァーしていますが(マキシ・シングル「語り継ぐこと」に収録)、期待したほどの出来ではありませんでした。ちょっとキレイすぎるんだなー。

Declassified








9) Martha My Dear / Groove Collective (from "Declassified" 1999)

B面トップは、クラブ・ジャズということになるのでしょうか、ニューヨークのグルーヴ・コレクティヴによる異色のカヴァー。これは一聴の価値がある画期的な解釈だと思います。とにかくリズムが気持ちいい。ポールはきっとこういうカヴァーは大好きでしょう。ところで以前、マイク・ヴァイオラのライヴを観に行ったとき、彼がアンコールでこの曲のイントロを弾いていたことを思い出しました。やるのかと思ったらやらなかったけれど・・・。

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10) I'm So Tired / Chris Duarte (from "The Blues White Album" 2002)
ジョンのけだるい曲は、さらにけだるいハチロク(6/8拍子)のブルーズ・カヴァーで聴きましょう。クリス・デュアーテはジョージア州アトランタのブルーズ・ギタリスト。いかにもサザン・ブルーズな感じが最高です。しかも原曲にはない素晴らしいギター・ソロまで入っています。これがまた美味しい。

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11) Blackbird / Billy Preston (from "Music Is My Life" 1972)
「ゲット・バック」や「ドント・レット・ミー・ダウン」のセッションに参加して「5人目のビートルズ」と呼ばれたキーボード・プレイヤー、ビリー・プレストンのアルバムより。原曲のアコースティックなイメージを完全に覆す、ハモンド・オルガンによるオープニングと躍動感あふれるファンキーな展開は、「この曲に黒人差別反対のメッセージを込めた」というポールの意図を十分に汲んでいます。独創的なアレンジが素晴らしい。

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12) Piggies (Maialini) / Fabio KoRyu Calabrò (from "Albume Bianco" 2000)
これをキワモノ扱いするかどうかずいぶん考えたのですが、面白いから選んでしまいました。イタリアはボローニャ出身のファビオ・カラブロ。ホワイト・アルバム全曲をウクレレ弾き語り(もちろんイタリア語)でカヴァーするという、とんでもないアルバムを出しています。名付けて「アルブメ・ビアンコ」(笑)。しかし、これがとてもよく出来ているんですね。この「ピギーズ」もウクレレ一本の弾き語り、豚の鳴き声の真似も入ったりして、抱腹絶倒の面白さです。なおファビオはこのあと「Sgt. Pepper's」のまるごとカヴァー・アルバムも2007年に出しています。タイトルは「Sergio Pepe e L'Orchestrina Cuori Solitari」(訳はご想像ください)。

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13) Rocky Racoon / Andy Fairweather Low (from "Be Bop 'N' Holla" 1976)
1960年代後半のイギリスのバンド、エイメン・コーナーのフロントマンとして知られるアンディー・フェアウェザー・ロウのソロ・アルバムより。日本では1991年のクラプトンとジョージの来日公演に参加してギターを弾いていた人、と書いた方が通りがよいかもしれません。フィンガー・ピッキングによる温かみのある音色がこの人の特徴ですが、このカヴァーでも素晴らしいフィンガー・ピッキングが聴けます。ちょっとしゃがれた味のあるヴォーカルも素敵。

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14) Don't Pass Me By / The Georgia Satellites (from "Shaken Not Stirred" 1997)
このリンゴの趣味的なカントリー&ウエスタン・ナンバーを、あろうことかノリノリのロックン・ロール・ナンバーに仕立て上げてしまったのがジョージア・サテライツ。MTV全盛の80年代にいきなり登場、泥臭いサザン・ロックで一世を風靡しました。この曲の激変ぶりには驚くほかありませんが、本当にカッコいいカヴァーです。

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15) Why Don't We Do It In The Road? / Lowell Fulson (from "In A Heavy Bag" 1970)
テキサス出身のブルーズ・マン、ローウェル・フルソンによる、これまた滅茶苦茶カッコいいミディアム・テンポのカヴァー。ジャケットからもわかるように、このアルバムは当時のサイケデリック・ムーヴメントを意識したサウンドになっていて、コアなブルーズ・ファンからはあまり高く評価されていません。しかしこのアルバムでフルソンを知ったロック・ファンには、とても魅力的なアルバムに思えるのです。「ホワイト・アルバム」ではポールのお遊びのように見えた「埋め草」的な曲が、ヒリヒリするブルーズに大変身。

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16) I Will / 原田郁子 (from "Apple of her eye りんごの子守唄" 2005)
名曲だけに誰のカヴァーを選ぶか悩みどころですが、個人的に大好きな原田郁子の声でこの曲を聴きたい、ということでこのヴァージョンを選曲します。ウーリッツァーのエレピとフルートをフィーチュアした、鈴木惣一郎バンドのほんわかサポートを得て、イクコちゃんの声がさらに魅力的に聴こえます。

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17) Julia / イノトモ (from "Apple of her eye りんごの子守唄" 2005)

同じアルバムが続いて恐縮ですが、本当にこれはいいアルバムなんです。未聴の方はぜひお試しを。ということで「ホワイト・アルバム」1枚目のシメはイノトモ。もともとナチュラルなテイストが売りのシンガー・ソングライターですが、ここでもマイクにすごく近い感じの囁き声で、ジョンの名曲を歌ってくれます。癒されます。

次回は「ディスク2」。乞うご期待。

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Covered Beatles (10) Magical Mystery Tour 編

Covered Beatles も第10回を迎える運びになりました。ちらほらとコメントも頂いたりして、大変ありがとうございます。不定期更新で申し訳ありませんが、コンプリート目指してぼちぼち書いていきますので、ご贔屓のほど宜しくお願い致します。

今回は「Magical Mystery Tour」です。もともとEP2枚組として発売されましたが、米国での発売の際にアルバム未収録のシングル曲5曲を加えたLPとなり、そのフォーマットがCD化に至るまで定着しています。今回もその曲順で選曲していきましょう。

Water_me






1) Magical Mystery Tour / BONNIE PINK (from "Water Me" 2007)
オープニング・トラックはこれで決まり。「英語でしゃべらナイト」のテーマ・ソングにもなっていましたが、ボニー・ピンクの2007年のマキシ・シングルに収録されているカヴァーです。ポップで賑やかなサウンド・メイキングは、洋楽アーティストたちに負けないオリジナリティとクオリティの高さを誇ります。楽しい!

Fool_on_the_hill






2) Fool On The Hill / Sergio Mendes & Brasil '66 (from "Fool On The Hill" 1969)
「フール・オン・ザ・ヒル」のカヴァーと言えばイの一番に挙げられるのがこれ。ストリングスを導入したクールでアーバンな感覚に溢れるなサウンドは、ボサ・ノヴァという枠を超えて優秀なポップ・ミュージック(A&M流の)になっていると思います。このアルバム自体も名盤。

Golden_picnics






3) Flying / 四人囃子 (from "Golden Picnics" 1979)
こんな曲のカヴァーも、ちゃんとあります。日本を代表するプログレ・バンド、「都立家政のピンク・フロイド」(このネーミングもすごい)こと四人囃子のセカンド・アルバムからの選曲。まあ、四人囃子としては「遊び」程度の演奏ながら、ふわふわした幻想的な雰囲気はしっかりと出ています。

In_the_city_in_the_woods






4) Blue Jay Way / Tracy Bonham (from "In The City + In The Woods" 2006)
アメリカのシンガー・ソングライター、トレイシー・ボーナムのEPより。彼女は素晴らしいヴァイオリニストでもありますが、ここでも雰囲気たっぷりのインディアン・ヴァイオリン風の演奏を聴かせています。ジョージが書いたこの曲の神秘的な側面を強調した解釈です。まさに霧の中で彷徨っているような感覚。

Pye_jazz_anthology






5) Your Mother Sould Know / Kenny Ball and his Jazzmen (from 7"single "Oki San / Your Mother Should Know" 1972)
ポールの書くノスタルジックなオールド・スタイルの曲の多くは、アマチュアのジャズマンだった父の影響が強く出ているように感じられます。ということで、この選曲も思いっきり先祖帰り。イギリスのトラッド・ジャズの代表的なトランペッター、ケニー・ボールによるカヴァー。トラッド・ジャズはデキシーランド・ジャズをベースにしたイギリス風のジャズで、ポールのお父さんもこんな感じの演奏をしていたのでしょう。本来はシングル(Pye 7N 45196)のB面なのですが、どうしてもジャケ写が見つからなかったので、この曲が収められているアンソロジー盤「The Pye Jazz Anthology」を掲載しています。

Sideways






6) I Am The Warlus / Men Without Hats (from "Sideways" 1991)
みんな大好き「アイ・アム・ザ・ウォルラス」。ハードなスプーキー・トゥースからオアシスのライヴ、ミュージカル映画「アクロス・ザ・ユニヴァース」でU2のボノが歌ったものまでいろんなカヴァーがありますが、コンピレーションとしての流れを考えると選びたいのはカナダのシンセ・ポップ・バンド、メン・ウィズアウト・ハッツのカヴァー。実質的ラスト・アルバムに収められたこのヴァージョンでは、ギターを大きくフィーチャー。イワン・ドロシャックの渋いヴォーカルに特徴があります。最後でテンポが倍になるところが耳を惹きつける。おしまいの一言もビートルズ・ファンをにやりとさせる仕掛け。

Angelus






7) Hello Goodbye / Milton Nascimento (from "Angelus" 1993)
B面のオープニングとしてこれはインパクトあるなあ。「ブラジルの声」、ミルトン・ナシメントによる「ハロー・グッバイ」です。ミルトンのファンであれば、あのファルセットの魅力を言葉で語ることの難しさを理解して頂けることでしょう。朝の光と祈りに満ちた、心が洗われるようなナチュラルな「ハロー・グッバイ」。こんなカヴァーもありです。

All_this_and_world_war_ii






8) Strawberry Fields Forever / Peter Gabriel (from soundtrack "All This and World War II" 1976)
みんな大好き「ストロベリー・フィールズ」。トッド・ラングレンの完コピからベン・ハーパーのエモーショナルなカヴァーまで、これまた色々なヴァージョンがありますが、ここで選んだのはピーター・ゲイブリエルのもの。オーケストラをバックにしていて、アレンジは意外とあっさりしているものの、あの声がこの曲を歌っているというだけで非常に満足感があります。クラシカルなバックトラックもこの曲に関しては悪くないでしょう。

Silver_morning






9) Penny Lane / Kenny Rankin (from "Silver Morning" 1974)
ソフト&メロウなAORで人気のケニー・ランキン、1974年のアルバムに収められたカヴァー。サビ以外はスキャットによる爽やかな歌唱で、弾むようなリズムもあって実に気持ちいい音楽に仕上がっています。オルガンのバッキングがまた気持ちいい。確かに朝の感じ。

Here






10) Baby You're Rich Man / Dean Brown (from "Here" 2001)
デヴィッド・サンボーンやマーカス・ミラー、ブレッカー・ブラザーズとの共演で長いキャリアのあるフュージョン系ギタリスト、ディーン・ブラウンの遅すぎたファースト・ソロ・アルバムより。売れっ子ミュージシャンである彼の人脈を反映して、非常に豪華な面子のレコーディングです。彼はロック的なギターも弾くのですが、ここではかなりジミ・ヘンドリックスを意識したプレイが聴けます。ヘヴィーでサイケな異色のトラック。

Love_actually






11) All You Need Is Love / Lynden David Hall (from soundtrack "Love Actually" 2003)
アルバムを締めくくるトラック。ジョンが書いたこの曲にはゴスペル的な要素があるので、このリンデン・デヴィッド・ホールのカヴァーはまさにツボ。映画「ラヴ・アクチュアリー」のサントラの中の1曲で、感動的な仕上がりになっていると思います。「UKからディアンジェロへの回答」と呼ばれ、UKソウルの旗手として期待されたリンデン・デヴィッド・ホールは、2006年に癌によりわずか31歳の生涯を閉じています。この歌声を聴くと、その才能が失われたことが惜しまれてなりません。合掌。

次回はいよいよ大作「The Beatles」へ!

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