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アンデラーとは誰か

ブロデックの報告書
フィリップ・クローデル(高橋啓訳)「ブロデックの報告書」みすず書房

素晴らしく読み応えのある小説だった。場所は中欧のどこかの田舎の村、時代は第二次世界大戦直後、そこで起きた集団殺人の「報告書」を作るように村人たちから命じられた主人公ブロデックの想像を絶する過去が次第に明らかになっていく・・・。著者のフィリップ・クローデルはいまフランスを代表する人気作家のひとりということだが、寓意的な語りの魅力が読み手をぐいぐいとひっぱっていく。1962年生まれという完全な戦後世代が、自国の戦争犯罪の問題に向き合っているというのも興味深い。当事者ではない分、計画的なユダヤ人虐殺という歴史的事実に対して突き詰めたリアリティは薄いのかもしれないが、人間性とは何かという問題に注いでいるまなざしの確かさは伝わってくる。それにしても、まるでカフカの測量技師のように村を訪れる「アンデラー」とはいったい誰なのだろうか。私には、それは村人の心に重くのしかかっている「両親の呵責」の象徴のように見えた。良心を虐殺することによって私たちは戦後を生き延びたのだ、と。

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