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マンボ!

Photo大阪シンフォニカー交響楽団の第121回定期演奏会を聴いた(11月2日、ザ・シンフォニーホール、指揮:大山平一郎)。このオーケストラを聴くのは実は初めて。「VIVA!アメリカ」と題されたプログラムで、バーンスタイン、ガーシュイン、バーバーといったアメリカ人作曲家の有名曲が並ぶ。大山はヴァイオリニスト・ヴィオリスト出身の指揮者であり、1979年にはロスアンジェルス・フィルハーモニックの首席ヴィオラ奏者に就任している。楽団のホームページに掲載されている大山の文章によると、今回のプログラムはすべてバーンスタインと共演した経験のある曲とのこと。「レナード・バーンスタインに捧ぐ」というタイトルでも良さそうな演奏会だ。

バーンスタイン:「キャンディード」序曲
ガーシュイン:ピアノ協奏曲へ調(ピアノ独奏:小川典子)
バーバー:弦楽のためのアダージョ
バーンスタイン:「ウエスト・サイド・ストーリー」よりシンフォニック・ダンス

「キャンディード」序曲のようなタイプの曲は(ショスタコーヴィチの「祝典序曲」などと同様)、いきなり猛スピードでスリリングに突っ走ることで聴衆を一気に興奮させることができると思うのだが、この日の演奏はややローギア発進。しっかりしていて堅実ではあるのだが、もうちょっとスピード感はほしい。複雑なリズムの変化にもややぎくしゃくした部分が感じられた。しかし次のガーシュインの協奏曲は素晴らしい演奏。これは独奏の小川の功績が大きいように思う。ガーシュインの音楽が一般的なクラシックのレパートリーと明らかに異なっているのは(そして実際の演奏において一番大きな問題となってくるのは)、そのリズム感覚だ。多くのポピュラー音楽と同様、2拍4拍のバックビートの意識を常に保つことや、いわゆるビートの「ウラ」に乗ることができないと、ガーシュインの音楽はとたんにもっさりとした「ジャズ風味クラシック」に成り下がってしまう。しかし小川はこのあたりが実にちゃんとしており、安心して気持ちの良い音楽の流れに身を任せることができた。私がクラシックのピアニストで不満を感じることが多い第1楽章のアレグロ・モルト(練習番号22)でもキレのあるリズムが音楽を引き締めていて見事。この小川のノリに導かれてオケも実にダイナミックな演奏を展開した。ただ、第2楽章の聴き物であるトランペット・ソロ、もちろん「ブルース」を意識して工夫した結果なのだろうとは思うが、ずりあがるフレージングの連発がややステレオタイプな「ジャズ・トランペット」に聴こえたのは残念。かなり意欲的でがんばったとは思うが。しかし全体的には素晴らしい仕上がりで、実に楽しく聴けた。

バーバーのアダージョはロマンチックにうねる方向性ではなく、地味ではあるが響きを丁寧に紡ぐタイプの演奏。そしてシンフォニック・ダンス。大山は前述した楽団のホームページの文章で、この曲をバーンスタインの指揮で演奏したときに強い印象を受けたことを書いている。私は実演は初めてだったのだが、ドラムセットを含む打楽器の饗宴、バリバリと吹きまくる金管、指パッチンや有名な「マンボ!」の掛け声・・・もともとミュージカルの音楽だということもあるが、完全にシンフォニック・オーケストラの範疇から逸脱している曲という印象だった。バーンスタインは明らかにビッグ・バンドの音響をオーケストラから引き出そうとしている。そしてそんな音楽がこの指揮者とオーケストラには合っていたのだろうか、これも実に楽しい演奏だった。

ここのところ首席奏者がガンガン抜けて、思わず「大丈夫か?」と心配したくなってしまう大阪シンフォニカーだが、私の初体験は悪くなかった。指揮者やプロとの相性が大きかったとは思うが、またこのオケを聴きに行ってもよいと思えるだけの充実した内容だった。

マンボ!

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コメント

大阪シンフォニカーほど誇り高いオーケストラはないと思います。ウィーン・フィル以上ですね。本当にいい演奏会だったことが、伝わってきます。

投稿: trefoglinefan | 2007年11月20日 (火) 17時55分

>trefoglinefan 様

コメントありがとうございます。

ブログ拝見しました。
ハイドシェックの件、残念なことです。

運営面ではいろいろ問題を抱えているオケのようですが、この日の演奏は悪くなかったと思います。また聴いてみます。

またお寄り下さい。

投稿: 無弦庵 | 2007年11月21日 (水) 21時00分

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