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ファウスト博士 vs 巨匠レーピン

Beethoven: Violin Concerto; Kreutzer Sonata Beethoven: Violin Concerto; Kreutzer Sonata

Beethoven: Violin Concerto, Violin Sonata No.9 "Kreutzer"
Faust(vn) Belohlavek / The Prague Philharmonia, Melnikov(p)
(左)
Repin(vn) Muti / Wiener Philharmoniker, Argerich(p)(右)

同じ時期に全く同じカップリングでリリースというのも珍しい。何やら挑戦的だが、おそらく単なる偶然だろう。どちらも私の贔屓のヴァイオリニスト。ファウストは新日フィルの定期でのハルトマンの葬送協奏曲が忘れられない(シマノフスキの1番の予定だったのだが、当日プログラムが変更された。素晴らしいサプライズ)。レーピンはまさにこの協奏曲をアシュケナージ/N響で聴いたことがある(NHKホールの最前列、P席)。

まずは協奏曲。ファウスト盤のオケの編成は小さく、弦が8・6・5・4・3。ヴィブラートを控えた奏法もピリオド・アプローチからの影響を感じさせる。この透明ですっきりとした響きのオケに支えられて、鋭くフレッシュなファウストの美音が冴え渡る。とくに高音の弱音などため息が出るような美しさだ。ブックレットにカデンツァのクレジットはないが、ベートーヴェンによるピアノ協奏曲編曲版のカデンツァをベースにしているようだ。第2楽章末のカデンツァも省略せず、かなり気合を入れて弾いている。目の覚めるような鮮やかなベートーヴェン。

対照的に、レーピン盤ではウィーン・フィルの分厚い弦の響き、コクのある管の音色が冒頭から聴く者に迫る。レーピンは実にあたたかく柔らかい音色。第1楽章から歌心に溢れており、ゆったりとしたテンポでたっぷりと旋律を歌わせていく。高音のカンタービレももちろん良いが、中低音域の響かせ方にこの人の大きな魅力がある。カデンツァはクライスラー。「ヴァイオリン協奏曲の王者」というキャッチコピーが似合いそうな、巨匠の風格たっぷりの演奏だ。

次にクロイツェル・ソナタ。ファウストは気心の知れたパートナーとの丁々発止のやりとりで聴く者を飽きさせない。レーピンのパートナーはなんとアルゲリッチ(!)。ヴァイオリニストを食いかねない大迫力の演奏に、レーピンはしっかりと組み合ってスケールの大きい表現を見せている。この曲は本当にヴァイオリンとピアノの格闘技だ。

ベートーヴェンの協奏曲は、誤解を恐れずに言えばひたすらスケールとアルペジオの連続。重音も第3楽章の第2主題まで出てこない。だからこそ、ヴァイオリニストの持っている音の質と音楽性が如実に現れてしまう怖い曲だ、と改めて思った。

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