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アンヘル・ロメロ&村治佳織

Romeromuraji






第49回大阪国際フェスティバル2007
2007年5月14日 フェスティバルホール
アンヘル・ロメロ&村治佳織 ギター・コンサート

武満徹:夢の縁へ
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
トゥリーナ:「闘牛士の祈り」作品34(弦楽合奏版)
ロドリーゴ:マドリガル協奏曲

ギター:アンヘル・ロメロ(アランフェス、マドリガル)
ギター:村治佳織(夢の縁へ、マドリガル)
指揮:山下一史
管弦楽:大阪センチュリー交響楽団

大阪国際フェスティバル最終日、再び満場のフェスティバルホールへ。まずは武満の「夢の縁へ」。弦は12型(12・10・8・8・6)。村治嬢はおそらくスペインを意識した真紅のドレスで登場。遠目でよくわかりませんでしたが、とてもキュートな姿だったことでしょう。演奏の方は、村治のソロは繊細で端整、かつドライで硬質な感じ(PAの具合もあると思います)。オケは個人的にはいまいち。「タケミツ・トーン」というわかったようでわからない言葉はあまり使いたくないのですが、この言葉がしばしば指し示している後期武満のオーケストラ作品特有の豊穣な響きは、管と弦の音量と音色を絶妙にブレンドすることで作り出されるように思います。その点からすると、今日の演奏は各パートの響きがうまくブレンドされず、妙に分析的に聴こえてしまいました。この曲の場合、ギターソロを柔らかく包み込むようなニュアンスが必要だと思うのですが、どうも弦の響きが足りない感じ。武満作品の醍醐味である、たゆたうような音の流れの中に身を浸す感覚を得ることができませんでした。村治のソロは線は細いものの、こういうドライなタッチの演奏もありかなと思います。

皆さんお待ちかねのアランフェスでは弦は10型(10・8・6・6・4)に縮小、これは後のプロでも変わらず。アンヘル・ロメロ氏は西海岸の人らしく比較的カジュアルないでたちで登場です。第1楽章が始まったときからその音色の艶やかさに魅せられます。これもPAの具合があるとは思いますが、明るく滑らかで、でも鄙びた土の感じもある魅力的な音色。第1楽章の中に頻出する細かいパッセージを、速いテンポでスパスパ決めていくテクニックも実に見事です。フレーズの微妙な間や崩し方も含めて表現に余裕があり、伊達に何十年もこの曲を弾いてきたわけではないと納得させられます。続く第2楽章も、細かい装飾のついたメロディーを歌うときの、うねうねとしたアラブ=アンダルシア的な節回しがさすが。カデンツァをかなり速めのテンポでさっさと弾き出すのにも驚かされました。そして第3楽章も軽快に駆け抜けて圧巻。オケは、ニュアンスとしてはあともう少しというところもありましたが(例えば第2楽章の練習番号8、オーボエが出るところでもっと音楽を変えて欲しかった)、全体的にはなかなか面白かったと思います。第2楽章でのロメロ氏とのかけあいも楽しめました。ただ、演奏の主導権は完全にロメロ氏にあったと思います。ある意味、アンヘル・ロメロ・オン・ステージ。もちろんそれはそれで楽しいのですが。割れんばかりの拍手。

休憩をはさんでトゥリーナ。私はあまりよく知らない曲だったのですが、センチュリーならではの透明な弦楽合奏の美しさが際立って好演でした。そしてギターデュオとオケによるマドリガル協奏曲、実演は初めてです。ステージに並んだロメロ氏と村治は父と娘という感じで、演奏の息はぴったり。ロサンゼルスやハワイでの特訓(?)の成果が出ていました。この曲は初演者でもあるペペ&アンヘル兄弟の録音が有名で、私もずっとそれを聴いていました。兄弟の音色はそっくりで、耳だけではどっちがどっちだかよくわかりません。しかしロメロ氏&村治だと、ふたりの音色の違いがはっきりとわかります。これは楽器の違いや奏法の違いによるものなのでしょう、やはり村治はドライで端整、ロメロ氏は艶やかで色気があります。オケも控えめながらしっかりとしたサポートで見事。ただトランペットは・・・とても重要なパートだけにそれなりの意気込みのある演奏で、事実素晴らしい部分もあったのですが、全体的にやや安定感に欠ける印象があったのは確かです。難しいですね。

盛大な拍手に迎えられてのアンコールは、ロメロ氏の「昨日が母の日だったので、アンダルシア出身の自分の母と、すべての母に捧げる」というコメント付きで、グラナドスのスペイン舞曲集より「アンダルーサ」。私はこの曲が大好き。村治が伴奏を、ロメロ氏が旋律を弾くという二重奏で、何だかとても温かくて泣けました。

最後に演奏とは全く関係のない愚痴。今日の私の両隣のマナーはひどいものでした。右の人はロメロ氏がひとフレーズ弾くごとに「ほんまええなぁ~」「速いわぁ~」と低い声の有声音で呟き続けるし(あなたの口は私の耳元です)、左の人は演奏中もがさごそと動き続けて、しまいにはカバンのファスナーをじゃーっと音をたてて閉めたりする。どちらもいい年のオジサンです。私は自分も生命体である以上、完全に無音でいるのは難しいということはよくわかっているので、キレたりはしません。でも演奏会は公共の場。お互いに気持ちよく音楽が聴けるように、できるだけ無音でいるような努力や我慢は絶対に必要だと思っています。個人的な印象ですが、若い人のほうが比較的マナーはいいと思います。

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