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チョン・ミュンフン/フランス国立フィル

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第49回 大阪国際フェスティバル2007

2007年5月10日 フェスティバルホール

指揮:チョン・ミュンフン
管弦楽:フランス国立フィルハーモニー管弦楽団
コンサートマスター:スヴェトリン・ルセヴ

フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」 作品80
ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2組曲
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

フェスティバルホールも今年で建て替えとのこと。私は人生のほとんどを東京近郊で過ごしてきたので、関西の人々ほどこのホールに強い思い入れはないのですが、改めて内装を眺めていると確かに歴史を感じます。東京でいうと上野の東京文化会館と同じようなイメージでしょうか。私にとってはおそらく今回の大阪国際フェスティバルが、現在のホールでの最後のコンサートになりそうです。

チョン・ミュンフンも東京で何度か聴いていますが、フランスのオケとの実演は私は初めてです(パリ・バスティーユとのコンビが有名でしたね)。今回のフランス近代プロは指揮者にとってもオケにとってもお家芸の領域でしょう。タイトルを並べてみただけで、フルートがんばってねという感じですが・・・。会場はほぼ満席でした。

「ペレメリ」の弦は12型。意外と小さい編成だなと思いましたが、フォーレの音楽の親密な響きを表すのには確かにこのぐらいが適当なのかもしれません。チョンのタクトから出てきた音楽は本当に柔らかく繊細なもの。霞がかかったような弦の響き、素朴で優しい管の音色、「フランスのオケ」というイメージにぴったり合った演奏です。「前奏曲」で優しく語りかけ、「糸を紡ぐ女」でキビキビと弾み、「シチリアーナ」でテンポを微妙に揺らしながらしっとりと歌って、「メリザンドの死」でシンフォニックに鳴らすという、4曲のまとめ方もストーリーがあってしっかりとしています。オケは音色の繊細さにかなりこだわっているようです。ブラーヴォ・・・あれ、フルート立たせないの?

「ダフクロ」の弦は15・13・12・10・8。グロッケンシュピールは鍵盤仕様で、チェレスタと並んでいました。これは実に素晴らしい演奏だったと思います。「夜明け」の有名な冒頭の音色の繊細さは言うまでもなく絶品でしたが、クライマックスでフォルテシモが出たときに、ただ繊細なだけではなくてここまでしっかり鳴るんだ~と驚きました。響きが全く濁らない、実に美しいフォルテシモでした。「無言劇」はもちろんフルートの独壇場。フルート隊は第1奏者だけではなく、さすがに全員が鍛え抜かれていて上手いです。アルト・フルートも見せ場を見事に決めました。そして「全員の踊り」、熱狂して加速していくリズムの昂揚感の表現がさすが。ラヴェルならではの見事な打楽器使いが大好きなのですが、シンバル奏者は「合わせ」と「バチ」を見事にひとりでやってのけて見物でした。やはり美しい音色を保ったままのフォルテシモの迫力が最高。いや~ブラーヴォ・・・あれ、またしてもフルートを誰も立たせないの?休憩。

「ハルサイ」の弦は「ダフクロ」と同じ。版についてはプログラムのどこにも明記されていませんでしたが、1947年版(1967年再改訂)で間違いないと思います。冒頭のファゴットが吹き始める前、ホールに完全な沈黙が作り出されるまで待つことで作り出された緊張感が印象的。そしてこの演奏は・・・う~ん、明らかに最近の「ハルサイ」の傾向であるシャープでキレのあるリズムを強調した演奏とは違う傾向のもの。個々の楽器の響きを集積してマッシヴな迫力で攻めてくるといった感じの演奏です。だからニュアンスがちょっと重い感じで、最近のキレのある演奏に慣れてしまった耳にはやや不明瞭に聴こえるところがありました。縦線が微妙に揺らいだり、ここにきて若干のミスも目に付きます(まあ、たいしたことではありませんが)。ティンパニは基本的には「ひとり叩き」で、必要なところだけもうひとり加わるというパターン。ギロはふたりでギシギシやってました。面白かったのは例の「11連打」がかなり遅いテンポだったこと。これも「重め」の印象につながっています。そして指揮者によっていろいろと手を加えることも多い「いけにえの踊り」はたぶん楽譜通りにやっていた模様(遠くて完全に判別できなかったのですが、ピツィカートはなかったと思います。近くでご覧になった方がいれば教えてください)。全体に打楽器を含めて音色にはかなりのこだわりがあるようで面白かったのですが、個人的にはもうちょっとリズムのキレが欲しいかなと思いました。時々スリリングな展開にアドレナリンが出まくるような演奏もあるのですが、今回はそこまでではなかったかと。重量感と迫力はかなりあったのですが・・・。まあ、これもひとつのスタイルで、演奏として悪くはなかったです。ファゴット立たせていますが、それだけ。もうちょっとメンバー紹介してほしい・・・。

アンコールは歌劇「カルメン」前奏曲。もうこれは余裕綽綽の見事なパフォーマンスでした。今回聴いてみて、チョン・ミュンフンは繊細な音楽作りをする点でやはりフランスのオケと相性が良いのだと感じました(逆に、アメリカの地方オケとかは難しそうですね)。また、この人は強烈な個性的解釈を打ち出すというよりは、そのオーケストラの得意とする部分を最大限に引き出してくるタイプの指揮者なのだということも理解しました。それにしても「ダフニスとクロエ」は良かった。CDで全曲版も出ているようですが、ぜひ合唱つきで実演を聴いてみたいものです。

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