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「ペトルーシュカ」を聴く (補遺)

さすがにもうおしまいにしようと思いますが、最後によく言及される録音をいくつか。

Kondrashin






Kondrashin / Royal Concertgebouw Orchestra
(1973/2/8 Amsterdam Live)

1947年版。最近の録音で言えばゲルギエフのものなどに近い、即興的な要素の強い演奏・・・ですが、演奏自体はゲルギエフより何十倍も良いと思います。とにかく味付けが濃い。コンドラシンのペトルーシュカを聴いたストラヴィンスキーは、その「間のとりかた」を賞賛したそうですが、それは何なのか?この録音がまさに答えです。不意にためたり、はずしたり、遊戯的な策略に満ちたペトルーシュカ。絶妙な「タメ」や「間」が出てくるたびに「くぅ~」という感じですが、特筆すべきは最後のペトルーシュカの幽霊のトランペットでしょう。最後にこのタメをやられると、誰でも「ブラヴォー」と叫んでしまいますよね。他にも素晴らしいところはたくさんあります。冒頭の謝肉祭はまさにしっちゃかめっちゃか、祝祭日などという気取ったものではなく大混乱のお祭り騒ぎですし、「ペトルーシュカの部屋」のコーラングレの音色の寂寥感も凄い。第4場に入ったところで音量をぐっと抑えるのも良いし、「馭者と馬丁の踊り」をここまで臆面もなくコサック・ダンス調でやってくれた演奏もありません(後半でテンポ・アップしていきます)。いやあ面白い。縦線の崩壊を含む、ライヴならではの演奏の乱れやミスは相当ありますが(ピアノも見せ場でかなりもつれている)、ここまでやってくれたら誰も文句は言わないでしょう。コンドラシン御大が得意の空手チョップで名門コンセルトヘボウをキリキリ舞いさせている光景が想像できます。この実演を見ることができた人たちは、かなり幸せですね。

Dutoit2_2




Dutoit / Orchestre Symphonique de Montreal
(1986/11 Montreal)
1911年版。デュトワ2回目の録音。冒頭から繊細で柔らかい音色でひきつけます。テンポはさほど速くもなく、リズムのキレや迫力という点からは物足りないところもありますが、アンサンブルはとても高度なテクニックでまとまっており美しい。ロシアの原色で荒々しい見世物小屋のペトルーシュカではなく、パステルカラーで洗練されたバレエとしてのペトルーシュカです。場面転換の太鼓は第1場から第2場への転換時のみ。ところどころに仕掛けがほどこしてあり(例えばムーア人とバレリーナの踊りの後半で強調されるどす黒く濁った低音の響き、「馭者と馬丁の踊り」に入る前の一瞬のタメ、その後半での弦の楽譜にはないアクセントのつけかたなど)、どれも派手ではないですが非常にセンスがいい。全体的に軽いけれど、聴いていてとても楽しい演奏です。エンディングのピツィカートにすらこういう表情がつけられるとはね。感心します。

Chailly




Chailly / Royal Concertgebouw Orchestra
(1993/10 Amsterdam)

1947年版。走らず慌てず、リズムを淀みなくしっかりと打ち出しながら、わかりやすい表情づけで進んでいく演奏。ちょっと変わっているなと思ったのは、第2場の前の太鼓連打、最初をpにしていることでしょうか(「遠くで」という1911年版からの流用ですね)。あと、大太鼓の迫力がなかなか。しかしそれ以外は極めて普通。録音も良いし、コンセルトヘボウの美しい音色も含めて完成度は高いと思いますが、面白いかと問われれば躊躇します。うまいんですけどね。

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