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「ペトルーシュカ」を聴く (4)

聴いているうちに思ったのですが、冒頭のフルートの旋律と、それにレスポンスするチェロの旋律は、「語り旋律」ではないでしょうか。ペテルブルクの謝肉祭の市場にひときわ高く響き渡る物売りの声、あるいは呼び込みの声を採譜したらこういう感じになるような気がするのです。何と叫んでいる声なのでしょうか?

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Boulez / The Cleveland Orchestra
(1991/3 Cleveland)

1911年版。ブーレーズの再録音。精密でクリアなリアリゼーションという基本的な方向性はそのままですが、録音が良くなったせいもあるのでしょう、音色がより精妙に伝わってきます。いまとなってはテンポもそれほど速くは聴こえず、むしろ全体的に落ち着いた感じ。音楽の勢いというか、迫力という点では旧録音の方が勝っていると思います。しかしながら雰囲気はこちらの方がゴージャス。単にクリアなだけではない、完成された音楽として魅力あふれる出来栄えといえるでしょう。特筆したいのは「ペトルーシュカの死」以降。色彩的で派手な部分もいいですが、このエンディングのパートをここまで丁寧に描き出しているのには圧倒されました。ブーレーズ恐るべし。

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Salonen / The Philharmonia
(1991/10/16 London)

1947年版。確かに技術的にも上手いし、精密だし、細かいニュアンスもあるし、文句のつけようがない・・・のだけれど、どうにもワクワクしない演奏。あまりにもクール、こんなのあったりまえとばかりに演奏しているので、全く面白くありません。どうしたものか・・・と思っていたら、第4場の舞曲に入って俄然演奏がノってきました。「農民と熊」の低弦の迫力が凄い。「ジプシー女と商人」のテンポの切り替えが超絶的。そして「馭者と馬丁」のリズムの弾み方、大太鼓のヘヴィな響きにやられました。サロネンさん、ぜひもう一度ロサンゼルス・フィルと録音してください。

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Gergiev / World Orchestra for Peace
(2003/5/6-9 St.Petersburg Live)

1911年版。サンクトペテルブルクでのライヴ録音です。最初から最後まで、いかにもゲルギエフ!な演奏です。まずは何かに追いかけられているように慌てふためいて走り出す、ただごとではない冒頭が極めてユニーク。そして後は、思いっきりためたり、いきなり間をとったり、粘っこく引き伸ばしたり、素早く駆け抜けたりと自由自在でやりたい放題。いろいろと面白いところ続出ですが、個人的には「農民と熊」のぐっとテンポを落としてガーガーとやる低弦が大好きです。「ロシア的で原色の演奏」と評されているようですが、私がロシアっぽいと思ったのは弦のダークな響きでしょうか。精密に計算されたブーレーズの対極にあるような、野性的で即興的な演奏です。場面転換の太鼓連打の扱いは結構自由で、第2場に入るところは長めにやり、入ってからの冒頭のところは省略。第2場最後のトランペット・ソロの前のところも省略しています。ライヴにつきものの傷は少なからずあり、中でも「子守女の踊り」の中のトランペットの大フライングには衝撃を受けます・・・しかし、こんなのいちいち指摘しても仕方ないでしょう。この演奏は、ライヴだからこそ成立しているのです。ゲルギエフはライヴが面白いと思います。

そして、こんなにたくさんの録音を聴いたにもかかわらず、私はやっぱりクラシックはライヴが一番だと信じてやみません。録音の良さと便利さを十分理解した上で言えることですが、クラシックに関しては録音は生演奏の体験を超えることはできないと思います。もともとそういう風に作られている音楽なのだから仕方がない。ああ、次の演奏会が待ち遠しい。

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