« 将軍家への献上 鍋島 | トップページ | パウル・クレー 絵画のたくらみ »

パリ、ジュテーム

Paris「パリの街における出会い」をテーマに、世界中の映画監督が撮影した5分間のショート・フィルムを18本集めたオムニバス。こういうタイプの作品で近年良かったのは「10ミニッツ・オールダー」(「人生のメビウス」「イデアの森」どちらも)でした。この「パリ・ジュテーム」は、ヌーヴェル・ヴァーグの監督たちによる「パリところどころ」(1965)の現代版。18本の作品の中には過去の様々な作品へのリファレンスやオマージュがいろいろと組み込まれていて、映画ファンのマニア心をくすぐる仕掛けとなっています。昨年のカンヌ映画祭「ある視点」部門のオープニングを飾った作品なのですが、なるほど、それにふさわしい作りだと思います。

私は決して映画マニアではないので、そのような「ほのめかし」を十分に楽しめるようなタイプの観客ではないのが残念なところです。しかし豪華なラインナップ(監督も俳優も)と、「恋人たちの街」パリのあちこちを舞台に繰り広げられるショート・ラヴ・ストーリーというコンセプトはとても魅力的だと思います。また、ひとつひとつの作品は演出のテイストも撮影の手法もかなり異なっているので、その取り合わせの妙という楽しみもあります。私が気に入ったのはコーエン兄弟の「チュイルリー」(観光名所なのに舞台は地下鉄の駅の中というひねくれたアイディアが最高)、アルフォンソ・キュアロンの「モンソー公園」(ワンカット長回しと意外性のあるプロットに脱帽)、アレクサンダー・ペインの「14区」(素晴らしいペーソス、ラストの作品はこれ以外に考えられない)といったところでしょうか。日本代表の諏訪敦彦「ヴィクトワール広場」も秀逸な出来です(ジュリエット・ビノシュとウィレム・デフォー!)。18作品を通して観て思ったのは、多くの作品で「外国人が見たパリ」という視点が強く打ち出されているということ。もちろんフランス出身の監督もいるのですが、外国人がパリという街をどのように見るか/経験するかという視点がまるで裏のテーマとして流れているように感じました。グリンダ・チャーダ「セーヌ河岸」のイスラム系女学生、ウォルター・サレス「16区から遠く離れて」における移民のベビーシッター、オリヴァー・シュミッツ「お祭り広場」のアフリカ系男女・・・。この視点こそが、実にリアルな「今のパリ」を描き出す上で重要な役割を果たしていたように思います。また直接的に外国人が登場しなくても、外国人監督ならではのパリ(とそこに住む人々)への強いオマージュが感じられた作品もありました。イザベル・コイシェの「バスティーユ」や諏訪作品がこれに当たるでしょう。「外国人が見たパリ」という視点は、このオムニバスが単に「パリところどころ」の焼き直しで終わらないための、非常に大切なポイントであったように思います。

「パリ」と「出会い」という内容上の縛りがあるため、それぞれの作品は「10ミニッツ・オールダー」ほど個性が際立つものとはならず、また内容も深くはなく、読後感が淡いのは致し方ないところでしょう。そこまでの強い作品ではない。むしろ、それが「パリ」という街を描いたときの独特の「感じ」なのかなと思います。だからやっぱりこのアンソロジーは、パリとフランス映画を愛する人たちに捧げられた贅沢な贈り物なのでしょう。そして日本人としては、ぜひこの企画で「東京、愛してる」が観たいと思います。誰が、どんな東京を撮ってくれるのでしょうか?

フランス・ドイツ合作、2006年。

|

« 将軍家への献上 鍋島 | トップページ | パウル・クレー 絵画のたくらみ »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/78230/5892122

この記事へのトラックバック一覧です: パリ、ジュテーム:

« 将軍家への献上 鍋島 | トップページ | パウル・クレー 絵画のたくらみ »