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Charaとコトリンゴ

UNION

Chara「UNION」

1990年代初頭の日本の音楽シーンには横文字の名前の女性シンガーが大勢現れましたが、その中で私が今でも聴き続けているのはUA、Aco、そしてCharaということになります。UAはどんどん変貌しながらエネルギッシュに力作を出し続け、Acoはしだいに寡作になりつつも宝石のような音の玉手箱をときどきそっと差し出すようになり、そしてCharaはある意味では全く変わっていません。しかしながらこの3人に共通するのは、声そのものに強いオリジナリティがあるということでしょうか。どんなバックトラックでも、この声が乗ればその人の曲になってしまう。一度好きになってしまうとなかなかやめられない、という中毒性の高い声の持ち主たちだと思います。

レコード会社移籍後初の、そして久しぶりのフルアルバムの登場(インディーズで1枚制作していますが、私は未聴)。先行発売されていた3枚のシングル(いずれもカップリングのカバー曲が秀逸だった)からも感じたことですが、ここしばらくのやや内向的な作風から一転して強いエネルギーを発散する作品になっています。「昔のCharaに戻った」というような声が聞かれるのも納得。しかしM③「Crazy For You」からのエレポップ3連発はちょっとびっくり。この4つ打ちとピコピコ感は何でしょうか?音響系/エレクトロニカを経由したエレポップはいま世界的に流行中のようなので、これらの曲もその流れの中に位置付けるべきものでしょう。全体的にポップな、しかしやはり切ないいつものCharaワールド。

Charaの声が喚起する中心的な感情、すなわり彼女の音楽の本質が「切なさ」(ブラジル音楽における「サウダーヂ」と同様に翻訳しにくい感情)にあることは衆目の一致するところだと思いますが、今回もその期待は裏切られません。また、歌詞カードを見なければ絶対に意味のわからない、完全にサウンドと一体化して効果をあげる歌詞(This is my car が「大切なんか」ですからね)もいつもながら。ここしばらくの内向的なCharaも結構気に入っていただけに、このアルバムを最初聴いたときはちょっと戸惑いも感じたのですが、やはり中毒性の高い声、繰り返して聴くうちにやはりどんどんクセになっていきます。あのフレーズ、あの言葉、あの部分の発声が気持ちいい、というレベルになっていくのです。どんなバックトラックでもCharaの声があればCharaの曲、というのはつまりそういうことです。さすがに「最高傑作」とまでは私は断言しません。しかしChara好きはこのアルバムに決して失望しないでしょう。というか、もう買ってるよね。

こんにちは またあした にちよ待ち

コトリンゴ「こんにちは またあした」「にちよ待ち」

坂本龍一プロデュースでデビューしたコトリンゴのシングル2枚。本名は三吉理絵子さんというようですが、なんというか、矢野顕子に似てますね、これ。英語の曲(「雨の日」)なんてほとんど「BROOCH」の世界ではないですか。教授、これでいいんですか。というのは冗談として。

基本的にピアノの弾き語りがベース。こういうほんわかした舌足らずな甘い声も私は好きです。それにピアノのセンスがとても良い。テンションを効果的に使ってジャズっぽい雰囲気を出していますが、決してバリバリと弾きすぎず(でもとても上手い)、間を生かしている感じ。「にちよ待ち」の5拍子スイングに弦楽四重奏がかぶさるアレンジも実に素敵。実に洗練された音楽です。このナチュラルな感覚はとっても気持ちがよいのですが、ただ、なんだか歌詞を含めて「ロハス音楽」という言葉が頭にちらついてしまうのがちょっと気になるところ。矢野顕子の音楽が初めから持っていたような「毒」(表現として過剰な部分)がここにはないんですね。とはいえ、そこまで求めるのは酷というものかもしれない。だから、この人がここからどう展開していくかがとても楽しみです。ライヴが聴きたいですね。

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