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パフューム ある人殺しの物語

Perfume_1 大ベストセラー小説を原作とした映画のようですが、恥ずかしながら未読。ということで、映画作品としてのレヴューです。以下ネタバレ注意。

私も映像の仕事をしているので、匂いとか味が映像では直接的に伝えられないということの意味はとてもよくわかります。だからテレビではリポーターが代わりに体験して感想を言ったりするのですが、あまりスマートな表現方法ではない(わかりやすいけど、美しくない)というのが個人的な意見です。この映画ではリアルな映像の力だけで匂いという感覚を伝えようとしており、これはとてもまっとうなやり方だと感じました。腐りかけた魚の内臓の中で蠢く蛆虫、白く滑らかな肌にそばかすの浮き出た女性の胸元、陽光の下で一面に広がる紫色のラヴェンダーの畑。また、遥か遠くの匂いまでも嗅ぎ当ててしまう主人公グルヌイユの超人的な嗅覚を表現するためのステディカムや空撮といったカメラワークも素晴らしいアイディア。とくに最後にローラを追いかけていくショットは映像を拡大して荒れ荒れになるのですが、それがまた彼の嗅覚の状態を表しているようで面白い。困難な課題に挑戦して見事に成功していたと言えるでしょう(監督は「ラン・ローラ・ラン」の人ですが、赤毛に何らかの思い入れがあるのでしょうか。それとも原作通り?)

しかし、クライマックスのシーンが全くわからない。香水の力で人々が愛の世界に没入する・・・ということなのですが、映像とは関係のない論理的な点から見ても、あれはエロスを高める香水なのか?それならばなぜ人々は乱交状態にならずにキリスト教的な一夫一婦制を守って愛の営みにふけるのだろうか?というのは多いに疑問でした(後で確認したら、原作では乱交状態でした。ということは・・・)。映像的には、主人公から香りが発散されるという描写がやっぱりいまいち(グルヌイユのあの仕草はね・・・。また、匂いをCGで表すような演出は全く考えなかったと監督は語っていますが、群集の上に光の筋が広がっていく効果が控えめではあるもののつけられていたのを私は見逃していません)。やはりこのとんでもないシーンを映像化するのには見事に失敗しているというのが正直な評価です。笑えるシーンにしかなっていない・・・ヨーロッパだと受け取り方はちょっと違うのかな。愛=セックスなんだろうか、やっぱり。大画面の中で男女の裸体がうじゃうじゃあるのがここの映像の見せ所なのですが、あの画面の中で性器を露出しないように演技指導するのはかなり大変なことのように思いました。お疲れ様です。

ということで、映像はとても美しいし、ストーリーも途中までは楽しめるのだけれど、肝心のクライマックスで一気に半分ぐらい減点されるという映画でした(クライマックスのシーンが予告編やポスターで印象的に使われているので、途中でなんとなく予測できてしまうというのも残念なポイント)。もうひとつ、ラトル指揮のベルリン・フィルの演奏はたぶんすごいと思うのですが、なにしろ映画に没入しているのではっきりと感想が言えません(それがいい映画音楽のあり方でしょう)。ただ、エンドロールの途中(かなり最後のほう)で出るフルート・ソロ(パユでしょうか?)はとても美しくて印象的でした。サントラ盤を買うかときかれたら、ちょっと考えてしまいますが。

トム・ティクヴァ監督、ドイツ・フランス・スペイン合作、2006年。

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